
産業廃棄物の処理実務を進めるうえで、「排出事業者は誰か」という問いとあわせて生じるのが、「排出事業者はどの範囲を一単位とするか」という問いである。同一企業グループ内に複数の法人があるケース、一つの法人が全国各地に事業場を持つケース、個人事業主として複数の業務を掛け持ちしているケースなど、実態はさまざまだが、廃棄物処理法上の整理は比較的明確である。
廃棄物処理法が前提とする「事業者」の意味
廃棄物処理法に「排出事業者」の定義規定は存在しない。しかし法第3条第1項は、
事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
と定めており、この「事業者」が実質的に排出事業者に相当する。法令上、「事業者」とは事業活動を行う者を広く指すとされており、法人・個人を問わない。
法人単位が基本
法人格を有する場合、排出事業者の単位はその法人全体である。本社・支社・工場・営業所など複数の事業場があっても、同一の法人格に属する限り、法的には一の事業者として扱われる。
この点は、処理委託契約の締結においても意味を持つ。契約の当事者は法人であり、事業場ごとに別々の法人格がない場合は、法人全体を当事者として締結することが原則となる。ただし実務上は、廃棄物が発生する事業場の名称・所在地を契約書に明記することで、どの拠点からの廃棄物に関する委託かを特定する運用が一般的である。
個人事業主の場合
個人事業主は、その個人が排出事業者の単位となる。業種を複数掛け持ちしている場合でも、同一人が行う事業活動から生じた廃棄物であれば、排出事業者は同一人である。
グループ会社・関連会社は別単位
企業グループに属していても、それぞれが別個の法人格を持つ場合は、各社が別々の排出事業者となる。親会社が子会社から生じた産業廃棄物の処理責任を代わりに負うことは、原則としてできない。廃棄物処理法上の責任は法人格を単位として帰属するため、グループ内での廃棄物の横断的な管理を行う際には、各社が独立した排出事業者としての手続きを踏む必要がある。
委託契約書・マニフェストの名義についても、廃棄物を実際に排出した法人が当事者となることが求められる。グループ会社の名義を流用するような運用は、委託基準違反のリスクを伴う。
多量排出事業者における「事業場」の位置づけ
廃棄物処理法第12条第7項に規定する多量排出事業者(前年度の産業廃棄物発生量が1,000トン以上の事業場を設置している事業者)の制度においては、「事業場」単位で排出量を把握し、処理計画を策定・報告することが求められる。この制度は法人単位の責任を前提としつつ、個別の事業場レベルでの管理を義務付けるものである。
まとめ
排出事業者の単位は、法人格を有する場合は法人全体、個人事業主の場合はその個人となる。事業場が複数あっても同一法人である限り一つの事業者として扱われ、処理委託契約等の手続きも法人単位で行う。グループ会社など複数の法人が関わる場合は、廃棄物を排出した法人ごとに手続きを行うことが必要である。排出事業者の単位を正しく把握することは、委託契約・マニフェスト・多量排出事業者制度など、実務上のあらゆる場面において基礎となる事項である。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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