
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)第2条第1項は、廃棄物を「汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染されたものを除く。)」と定めている。この条文の核心にある概念が「不要物性」である。ある物が廃棄物に該当するかどうかは、究極的には「不要物かどうか」の判断にかかっており、この枠組みを正確に理解しておくことは、産廃業者・排出事業者を問わず実務上きわめて重要である。
「客観説」から「総合判断説」へ ─ 判断基準の変遷
廃棄物処理法が施行された昭和46年当初、行政通知(昭和46年10月25日 環整45号)は「排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるもの」という考え方(いわゆる客観説)を採っていた。この立場によれば、占有者の意思や取引価値の有無は考慮されず、物の性状だけを基準に廃棄物かどうかが決まることになる。
しかしこの考え方には問題があった。貴金属を含む汚泥や金属くずのように取引価値が高く、実際に有償で売却されているものまで廃棄物として規制の対象になりうるという矛盾が生じたのである。この問題を受け、昭和52年(昭和52年3月26日 環計37号)に方針が改められ、現在の「総合判断説」が確立された。同通知は、廃棄物とは「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に勘案して判断すべきもの」であると整理した。
5つの判断要素
総合判断説の具体的な内容は、平成25年の環境省通知(平成25年3月29日 環廃産発第1303299号「行政処分の指針について」)においてさらに詳細化され、以下の5要素を複合的に評価することが示されている。
① 物の性状 ─ 利用用途に必要な品質を満たしており、飛散・流出・悪臭発生のおそれがないこと
② 排出の状況 ─ 排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前後に適切な保管・品質管理がなされていること
③ 通常の取扱い形態 ─ 製品としての市場が存在し、同種のものが通常廃棄物として処理されていないこと
④ 取引価値の有無 ─ 有償で譲渡されており、かつ客観的に見て取引に経済的合理性があること
⑤ 占有者の意思 ─ 適切に利用し、または他人に有償譲渡する意思が客観的に認められること
これら5要素はいずれかひとつで結論が出るものではなく、すべてを総合して評価することが前提となっている。
「占有者の意思」は主観ではない
実務上、特に注意が必要なのは⑤の「占有者の意思」の解釈である。この「意思」は、排出事業者が「再利用するつもりだ」と主張すれば足りるような主観的なものではない。通知は「客観的要素から社会通念上合理的に認定しうる意思」であることを明記しており、実態が伴わない口頭の説明だけで廃棄物該当性を否定することはできない。保管状態・管理記録・出荷実績といった客観的事実との整合性が厳しく問われる。
実務上の留意点
事業活動の中で「この物は廃棄物ではない」と判断する場合には、上記5要素のすべてについて客観的な裏付けを整備しておくことが望ましい。廃棄物への該当性を誤ると、無許可処理や委託基準違反となる可能性がある。判断に迷う場合は、所轄の都道府県・政令市の窓口へ事前に確認することを強くお勧めする。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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