二者契約の原則と現実のギャップ

 産業廃棄物の処理委託において、廃棄物処理法は排出事業者が収集運搬業者と処分業者のそれぞれと直接契約を締結することを求めている(第12条第5項)。いわゆる二者契約の原則である。しかし実務の現場では、この原則が守られにくい状況が繰り返し生まれる構造的な背景がある。なぜ三者契約的な形態が現場で発生し続けるのか、その根本にある要因を整理していく。

昭和・平成初期の「丸投げ」実態

 三者契約が生まれる最も典型的な原因は、排出事業者が「処理はすべて収集運搬業者に任せればよい」という認識のもとで業者を選定するケースである。廃棄物を引き取りに来る収集運搬業者が処分先も手配し、排出事業者は料金を一本化した形で支払う。このとき、排出事業者は処分業者の名称すら把握しないまま廃棄物を引き渡すという実態が、昭和から平成初期にかけて広く存在した。

 平成3年の廃棄物処理法改正は、まさにこの「丸投げ」の実態を是正するために行われた。改正前は書面による委託契約書の締結義務もなく、収集運搬業者が実際にどこの処分場に廃棄物を持ち込んでいるかを排出事業者が確認する仕組みも存在しなかった。この改正によって法第12条第5項に「それぞれ委託」の文言が明記され、書面契約とマニフェスト制度が義務化されることで、処分業者を含めた透明性ある委託体制の構築が法律上要請されるようになった。

今なお残る三者契約的な形態——その構造的要因

 しかし、法改正から30年以上が経過した現在もなお、三者契約に似た形態が現場から完全には消えていない。その背景には複数の構造的な要因がある。

 まず、排出事業者の多くが廃棄物処理を本業と捉えておらず、処理の手配を収集運搬業者に一任することを合理的な分業と誤解しているケースがある。特に廃棄物が少量の中小事業者では、処分業者を自ら探して許可証を確認し、個別に契約を締結するという手続きを煩雑に感じることがある。その結果、収集運搬業者が持参した契約書の内容を十分に確認しないまま署名してしまうケースも少なくない。廃棄物処理法が求める「それぞれ委託」の趣旨が、事業者の日常業務の中で意識されにくいという現実がある。

 次に、収集運搬業者側が「うちに任せれば処分先まですべてお任せできます」という営業スタイルで排出事業者に接触する慣行が残っていることも一因である。これは一見すると排出事業者にとって便利に映るが、法的には排出事業者が処分業者と直接契約を締結していなければ委託基準違反となりうる。排出事業者は処分業者の許可証を自ら取得・確認し、処理能力や許可品目が委託内容に合致しているかどうかを直接把握しておく必要がある。

 さらに、料金を一本化して収集運搬業者にまとめて支払う慣行も三者契約的な関係を温存させる要因となっている。廃棄物処理法上、収集運搬費と処分費はそれぞれ契約書に明示することが求められているが、合算した料金を収集運搬業者に支払い、処分業者への支払いは収集運搬業者が代行するという構図が形成されやすい。これは金銭の流れが不透明になるだけでなく、処分業者への料金が適正に支払われているかどうかを排出事業者が把握できないという問題も生む。

「任せる」から「確認して委託する」へ

 廃棄物処理法が三者契約を問題とする核心は、書式の問題ではなく、排出事業者が処分業者の許可内容・処理能力を独自に確認しているかどうかという一点にある。二者契約の原則は、排出事業者が最終処分まで責任を持つという排出事業者責任(法第3条)の具体的な表れである。処理を「任せる」のではなく、「確認したうえで委託する」という姿勢が、適正処理体制の根幹となる。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
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吉田哲朗
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