産業廃棄物を処理業者に委託する場合、排出事業者には産業廃棄物管理票(マニフェスト)に関して複数の法的義務が課されている。これらの義務は廃棄物処理法第12条の3を中心に規定されており、義務を怠った場合には罰則または措置命令の対象となる。本記事では、排出事業者が確実に履行すべき4つの義務を整理する。

1. 交付義務(第12条の3第1項)

 産業廃棄物の収集運搬または処分を業者に委託する際、排出事業者は廃棄物の引き渡しと同時にマニフェストを交付しなければならない。マニフェストには廃棄物の種類・数量・運搬先・処分方法などの法定記載事項を漏れなく記入することが求められる。記載すべき事項を空白にしたまま交付すること、または虚偽の内容を記載することも、交付義務違反として取り扱われる。

廃棄物処理法 第12条の3第1項(抜粋)
事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、産業廃棄物の引渡しと同時に当該運搬を受託した者に対し、管理票を交付しなければならない。

2. 措置義務(第12条の3第8項)

 排出事業者は、委託先からマニフェストの写しが規定の期間内に返送されない場合、または記載すべき事項が未記載もしくは虚偽の記載がある写しを受け取った場合に、速やかに当該産業廃棄物の運搬または処分の状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去または発生防止のために必要な措置を講じなければならない。この措置義務に基づき、施行規則第8条の29では、一定の期限までに措置内容等報告書(様式第4号)を都道府県知事等に提出することが義務付けられている。返送期限の目安は、運搬・処分終了については交付の日から90日(特別管理産業廃棄物は60日)、最終処分終了については180日であり、これを超過した日から30日以内に報告書の提出が必要となる。

3. 保存義務(第12条の3第5項)

 排出事業者は、委託先から返送されたマニフェストの写しを受け取ったときは、当該運搬または処分が終了したことを確認し、受け取った日から5年間保存しなければならない。行政庁による立入検査の際に確認される事項であり、紛失を放置した場合は保存義務違反となる。なお、電子マニフェスト(JWNET)を利用している場合はシステム上の保管がこれに代わるため、別途書類を保管する必要はない。

4. 報告義務(第12条の3第7項)

 紙マニフェストを交付した排出事業者は、毎年6月30日までに、前年度(前年4月1日から3月31日まで)の1年間に交付したマニフェストの交付状況に関する報告書(様式第3号)を、事業場の所在地を管轄する都道府県知事または政令市長に提出しなければならない。報告内容は廃棄物の種類・排出量・交付枚数等であり、事業場ごとに報告が必要となる。電子マニフェストのみを使用した場合は、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)が代わって報告を行うため、排出事業者が自ら報告する必要はない。

義務違反の罰則

 マニフェストの不交付・虚偽記載・保存義務違反・報告義務違反など、マニフェストに係る義務を履行しない排出事業者および処理業者は、廃棄物処理法第27条の2により、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられる。両罰規定により、行為者個人のみならず法人にも同様に適用される。また、措置義務違反により適正処理の確認が取れない状態が放置された場合、都道府県から措置命令が発出されることがあり、命令に従わない場合はより重い罰則(5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金)が科されることになる。

 マニフェストの管理は単なる書類手続きにとどまらず、排出事業者責任を具体的に果たすための根幹をなす制度である。交付・措置・保存・報告という4つの義務の内容と期限を正確に理解し、日常業務の中で確実に履行することが重要である。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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