廃棄物の処理をめぐる現場では、「これは有価物だから許可業者に頼まなくていい」「専ら物だからマニフェストは不要」といった判断が日常的に行われています。しかし、その根拠が曖昧なまま運用されていると、気づかないうちに廃棄物処理法違反を引き起こすおそれがあります。本記事では、専ら物と有価物のそれぞれの意味と、実務上の注意点を整理します。

有価物とは何か

 廃棄物処理法には、有価物の定義を直接定めた条文はありません。一般に、有価物とは市場で売買できる経済的価値があるものを指し、廃棄物に該当しないと判断されたものです。廃棄物かどうかは、占有者が有償で売却できるか、客観的な市場価値があるかといった複数の要素を総合的に考慮する「総合判断説」によります。

 重要なのは、有価物かどうかは名目ではなく実態で判断されるという点です。たとえば金属くずが市況の変化により逆有償(処理費を支払う形)に転じた場合、環境省の通知によれば廃棄物に該当すると判断されることがあります。「リサイクルするから有価物」「価値があると思っていたから」という主観的な理由は通用しません。

専ら物とは何か

 専ら物(もっぱらぶつ)とは、正式には「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物(または一般廃棄物)」といい、廃棄物処理法成立時から存在する4品目に限定されています。具体的には古紙・くず鉄(古銅等を含む)・空きびん類・古繊維の4種類です。

 この4品目を専門に取り扱う業者(専ら業者)には、法第14条第1項・第6項の規定により、産業廃棄物収集運搬業・処分業の許可が不要とされています。また、廃棄物処理法施行規則第8条の19第3項により、専ら業者に専ら物のみの運搬または処分を委託する場合は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付が不要です。なお、通常の産業廃棄物も取り扱う業者に専ら物を委託する場合は、マニフェストの交付が必要となる点に注意が必要です。

 ただし、委託契約書を不要とする規定は存在しません。産業廃棄物に該当する専ら物を委託する際は、書面による委託契約が必要です。この点は実務上見落とされやすく、省略すると委託基準違反となるおそれがあります。

誤解が生じやすいポイント

 実務でよく見られる誤解の一つは、「専ら物は廃棄物ではない」というものです。しかし専ら物はあくまで廃棄物処理法上の廃棄物であり、特例措置が適用されるにすぎません。排出事業者の責任が消えるわけではなく、処理が適正に行われているかを確認する義務は残ります。

 また、PETボトルや廃プラスチック、木くずなどは、リサイクル率が高くても専ら物とは認められません。対象は4品目に限定されており、対象外の品目を専ら業者に委託しても許可業者への委託義務は免除されません。無許可業者への委託は廃棄物処理法違反となります。さらに、古紙や古繊維に汚物が付着してリサイクルに適さない状態になった場合は通常の廃棄物として扱う必要があり、品目だけでなく状態・実態の確認が不可欠です。

有価物と専ら物を混同しないために

 有価物は「廃棄物に該当しない」ものであり、法の適用外です。一方、専ら物は「廃棄物であるが特例が認められる」ものです。この根本的な違いを正確に理解しないまま運用すると、本来許可業者への委託が必要な廃棄物を無許可業者に委託するという違反行為を招きかねません。判断に迷う場合は、担当の都道府県や政令市の窓口に事前に確認する姿勢が重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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