「特別管理産業廃棄物が発生している事業場なのに、管理責任者を置いていない」――そんな状況に気づいたとき、どう対応すればよいでしょうか。廃棄物処理法は、特別管理産業廃棄物を排出する事業者に対して、事業場ごとに管理責任者を選任する義務を課しています。知らずに放置していると罰則の対象になりますので、基本的な仕組みをここで整理します。

そもそも「特別管理産業廃棄物管理責任者」とは

 特別管理産業廃棄物とは、爆発性・毒性・感染性など、人の健康や生活環境に特に重大な影響を与えるおそれのある性状を持つ産業廃棄物のことです。廃油・廃酸・廃アルカリ(有害物質を含むもの)、感染性廃棄物、PCB廃棄物などが代表例です。これらを事業活動に伴って排出する事業場には、廃棄物処理法第12条の2第8項に基づき、適正な処理業務を行わせるための責任者を置かなければなりません。

 管理責任者の主な役割は次の3点です。①排出状況の把握(どの廃棄物が、どのくらい出ているかを確認する)、②処理計画の立案(適正な処理フローを設計する)、③保管・委託先の管理(保管基準の遵守と委託業者の選定・確認)。管理責任者は「企業単位」ではなく、「事業場単位」で選任する点が重要です。複数の拠点で特別管理産業廃棄物が発生する場合は、それぞれの事業場ごとに要件を満たす者を置く必要があります。

資格要件は廃棄物の種類によって異なる

 管理責任者に就くには誰でもよいわけではなく、廃棄物処理法施行規則第8条の17に定められた資格要件を満たす必要があります。要件は、発生する廃棄物が「感染性産業廃棄物」かどうかで大きく2つに区分されます。

 感染性産業廃棄物が発生する事業場(医療機関・検査機関など)の場合は、医師・歯科医師・薬剤師・獣医師・保健師・助産師・看護師・臨床検査技師・歯科衛生士等の資格を有する者、または環境衛生指導員として2年以上の実務経験を有する者が対象となります。また、大学・高等専門学校において医学・薬学・保健学・衛生学・獣医学を専攻して卒業した者、あるいはこれらと同等以上の知識を有すると認められる者も含まれます。

 感染性産業廃棄物以外の特別管理産業廃棄物が発生する事業場(工場・建設現場など)の場合は、理科系の学部卒業者に一定年数の実務経験が求められます。規定の学歴がない場合でも、廃棄物処理に関する技術上の実務経験の年数によって要件を満たせる場合があります。いずれの区分でも、「同等以上の知識を有する者」として多くの都道府県・政令市が認定しているのが、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の講習会修了者です。社内に該当する有資格者がいない場合は、計画的に受講を検討してください。

罰則と自治体ごとの届出に注意

 管理責任者を選任しなかった場合、30万円以下の罰金(廃棄物処理法第30条)が科される可能性があります。義務の存在を知らなかったとしても、法令上の責任は免れません。また、異動や退職によって一時的に欠員が生じた場合も同様に違反となりますので、後任の選任は速やかに行う必要があります。

 かつては国への設置報告義務がありましたが、平成12年の法改正により廃止されています。ただし、東京都のように条例等によって設置・変更・廃止の報告を義務付けている自治体もあります。事業場の所在地の自治体窓口で、届出の要否を確認しておくことが安全です。

 さらに、前年度に50トン以上の特別管理産業廃棄物を排出する事業場を持つ事業者は、多量排出事業者として処理計画書の作成・提出(毎年6月30日まで)も求められます(廃棄物処理法第12条の2第10項)。管理責任者の選任と合わせて確認が必要です。

まとめ

 特別管理産業廃棄物管理責任者の選任は、排出事業者責任の中核を担う義務です。「誰を責任者にするか」「資格要件を満たしているか」「自治体への報告は必要か」という3点を今一度確認することが、適正処理と事業継続の両立につながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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