解体・改修工事の現場では、石綿(アスベスト)を含む建材が廃棄物として発生します。石綿繊維は極めて細く、飛散すると吸い込んだ作業者や周辺住民の健康に深刻な影響を与えることがわかっています。廃棄物処理法はこうした危険性を踏まえ、石綿を含む廃棄物の取り扱いについて、通常の産業廃棄物よりも厳しい飛散防止措置を定めています。ここでは、法令が求める主な措置を整理します。

廃石綿等と石綿含有産業廃棄物――2つの区分と共通する原則

 石綿を含む廃棄物は、飛散性の程度によって大きく2つに分けられます。吹付け石綿や保温材など飛散性の高いものは「廃石綿等」(特別管理産業廃棄物)、成形板・ビニル床タイルなど比較的飛散しにくいものは「石綿含有産業廃棄物」として区分されます。区分は異なっても、どちらにも共通する大原則があります。それが「飛散させない、流出させない」という義務です(廃棄物処理法施行令第3条第1号イ、第6条第1項第1号、第6条の5第1項第1号)。この原則は、保管・収集運搬・処分のすべての段階に及びます。

保管時の飛散防止措置

 廃石綿等を保管する場合は、耐水性の材料で二重に梱包するか、固型化・薬剤による安定化などの措置を講じた後に梱包しなければなりません。保管場所には囲いを設け、「廃石綿等の保管場所」であることを明示した掲示板を見やすい場所に立てることも必要です。石綿含有産業廃棄物の保管においても同様に、破砕・変形させずに梱包・シートがけなどで飛散を防ぐことが求められます。仕切りを設けて他の廃棄物との混入を防ぐことも基準の一部です(施行令第6条第1項第1号ヘ)。

収集運搬時の飛散防止措置

 収集・運搬にあたっては、廃棄物を破砕しないことが基本です。廃石綿等であれば、二重梱包または固型化した状態のまま運搬し、容器が破損した場合にはただちに散水等で湿潤化させ、新たに梱包し直すことが必要です。石綿含有産業廃棄物については、他の廃棄物と混合しないよう区分して運搬すること、破砕・切断が生じないよう丁寧に扱うことが義務付けられています(施行令第6条第1項第1号ロ)。車両への積載時も、ダンプ荷台の仕切りやシートがけなど飛散防止を確保した積み方が求められます。

万一飛散が起きた場合の対応

 万一、運搬中や保管中に石綿が飛散するおそれが生じた場合は、ただちに散水等を行い湿潤化させるか覆いをかけ、飛散を最小限に抑える措置をとります。その後、改めて耐水性のプラスチック袋などで二重梱包をやり直してから、次の工程に移ります。飛散した状態で放置することは、廃棄物処理法上の基準違反に該当するだけでなく、大気汚染防止法や石綿障害予防規則上の問題にもつながりかねません。

委託先への情報伝達も現場管理の一部

 排出事業者として注意すべき点は、現場での物理的な飛散防止措置だけではありません。処理を委託する場合は、委託契約書やマニフェストに石綿含有廃棄物である旨を明記し、受託者がその情報を把握した上で作業できる状態にしておくことが必要です。特に比較的飛散性が高いとされるけい酸カルシウム板第1種や仕上塗材については、委託先にその旨を具体的に伝えることが環境省マニュアルでも推奨されています。飛散防止は現場の技術的対応と情報管理の両輪で成り立ちます。

 石綿廃棄物の飛散リスクは、「見た目で大丈夫そうだから」という判断では管理できません。区分と飛散性に応じた正しい措置を実行することが、事業者としての責任を果たすことにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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