
蛍光灯や体温計を廃棄する際、「これは特別管理産業廃棄物として扱う必要があるのか」と迷ったことはないでしょうか。水銀を含む廃棄物には複数の区分があり、それぞれ規制の内容が大きく異なります。特に「水銀使用製品産業廃棄物」と「廃水銀等」は混同されやすく、誤った分類は委託契約・マニフェスト・許可証確認のすべてに影響が出ます。ここでは、この2つの違いを中心に、水銀廃棄物の分類構造を整理します。
水銀廃棄物の3つの区分
廃棄物処理法の施行令・施行規則改正(平成28年・29年施行)により、水銀廃棄物は法律上3つの区分に整理されました。①廃水銀等(特別管理産業廃棄物)、②水銀含有ばいじん等(通常産廃・追加処理基準あり)、③水銀使用製品産業廃棄物(通常産廃)の3つです。②と③はいずれも特別管理産業廃棄物ではありません。「水銀を含む廃棄物=特別管理産廃」という思い込みが誤分類の典型的な原因です。この3区分はそれぞれ独立した処理基準が適用され、委託先に求められる許可の内容も変わります。3区分のいずれに該当するかを正確に判断することが、適正処理の出発点です。
水銀使用製品産業廃棄物――通常産廃だが条件管理が必要
水銀使用製品産業廃棄物とは、蛍光ランプ・水銀体温計・水銀血圧計・水銀電池など、水銀を使用した製品が産業廃棄物となったものです。この区分は品目の名称ではなく、構成する品目(ガラスくず・金属くず等)の許可に「水銀使用製品産業廃棄物を含む」という条件が付加される形で管理されます。なお、割れた状態で排出された蛍光灯も水銀使用製品産業廃棄物に該当します。血圧計が破損して液体水銀が漏れ出した場合も、環境省の見解では漏出後の水銀は「汚泥」として水銀使用製品産業廃棄物に該当し、特別管理産業廃棄物とはなりません。この点は多くの現場で誤解されやすいポイントです。
廃水銀等――特別管理産廃に該当する区分
一方、特別管理産業廃棄物に該当する廃水銀等とは何でしょうか。①特定施設(研究機関・大学・水銀回収施設等)において生じた廃水銀または廃水銀化合物、②水銀が含まれている物または水銀使用製品産業廃棄物から回収した廃水銀の2種類が該当します。つまり廃水銀等は、製品が廃棄物となったものではなく、水銀そのものが廃棄物となったもの、あるいは処理工程で取り出された廃水銀です。廃水銀等が生じる場合は特別管理産業廃棄物の処理業者への委託が必要となり、通常の産廃許可業者への委託はできません。
水銀含有ばいじん等――濃度基準と水銀回収義務
水銀含有ばいじん等は、ばいじん・燃え殻・汚泥・鉱さいのうち水銀を15mg/kg超含有するもの、廃酸・廃アルカリのうち水銀を15mg/L超含有するものが対象です。これも特別管理産業廃棄物ではありませんが、通常の産廃処理基準に加えて区分保管・種類明記等の追加義務があります。水銀含有量が1,000mg/kg(廃酸・廃アルカリは1,000mg/L)以上の場合は、さらに処理業者による水銀回収義務が生じます。製造業・金属精錬業など燃焼工程を伴う業種では特に確認が必要な区分です。
委託時の実務確認ポイント
委託時の実務上の確認事項として、委託先の許可証の廃棄物種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物を含む」の条件が付されているかを確認する必要があります。また、委託契約書・マニフェストへの種類の明記、保管場所掲示板への表示も義務となっています。水銀廃棄物の種類を正確に特定してから委託先の許可内容を確認するという手順が、適正処理の基本となります。
水銀廃棄物は「水銀を含む=特別管理」という単純な図式では整理できません。区分ごとの法的位置づけを正確に理解することが、誤分類によるトラブルを防ぎ、事業を守ることにつながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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