
廃棄物を「捨てたら終わり」では済まない
工場や建設現場から出る産業廃棄物を処理業者に引き渡した後、「あとは業者の仕事だ」と思っていませんか。たしかに収集運搬や処分は許可業者が担いますが、廃棄物が土壌や地下水を汚染した場合、排出事業者も責任から逃れられないケースがあります。ここでは、不適正処理がどのように土壌・地下水汚染を引き起こすか、排出事業者として何を知っておくべきかを整理します。
産廃の不適正処理が汚染を生むメカニズム
土壌汚染は、廃棄物が適正な遮水工のない場所に野積みされたり不法投棄されたりすることで始まります。廃油・廃酸・廃アルカリなどの液状廃棄物が地表に漏出すると、降雨とともに土壌に浸透し、やがて地下水を汚染します。重金属を含む汚泥やばいじんも、時間の経過とともに有害成分が溶出し、広域の帯水層を汚染する原因になります。汚染が判明するまで数年から十数年かかることも珍しくなく、環境省の令和5年度調査でも不適正処理の新規判明件数は121件・約5万トンと前年度より増加しています。
土壌汚染対策法と廃棄物処理法の関係
産廃の不適正処理に起因する土壌汚染には、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)が適用されます。同法では、有害物質使用特定施設の廃止時(法第3条)や、3,000㎡以上(有害物質使用施設の敷地は900㎡以上)の土地形質変更時(法第4条)に土壌調査が義務付けられており、汚染が確認されれば要措置区域に指定され、汚染除去等計画の提出指示(法第7条)を受けることになります。
廃棄物処理法では、第19条の5が、処理基準に適合しない処分が行われ生活環境の保全上支障が生じるおそれがある場合に、都道府県知事が処分者等に支障の除去等の措置を命じることができると定めています。委託基準に反する委託をした排出事業者もこの命令の対象です(同条第1項第2号)。さらに第19条の6では、委託基準を遵守していた排出事業者であっても、不適正処分が行われることを知っていた、または知ることができた場合には措置命令の対象となることが明記されています。
排出事業者として実務でできること
廃棄物処理法第12条第7項は、排出事業者が委託した廃棄物の処理状況を把握するよう努める義務を定めています。委託契約の締結とマニフェスト管理は最低限の対応ですが、可能であれば処分場に赴き、遮水工・浸出水処理設備の整備状況や保管・処理方法を現地で確認することが望ましいです。また、マニフェストの返送期限(収集運搬・処分:90日、最終処分:180日)を超えても返送がない場合は、処理業者への確認と適切な措置を速やかに講じる必要があります(法第12条の3第8項)。こうした対応の記録が、後日汚染が発覚した際に排出事業者の責任範囲を明確にする証拠にもなります。
環境リスクは経営リスクでもある
土壌・地下水汚染は一度発生すると浄化コストが莫大になります。原因が産廃の不適正処理にあると特定された場合、排出事業者は措置命令・行政代執行費用の求償にとどまらず、社会的信用への打撃も避けられません。適正な処理業者の選定と継続的な処理確認こそが、環境負荷の低減と企業リスクの抑制を両立させる最善策です。「委託したら終わり」ではなく、最終処分まで責任が続くという意識を社内で共有しておくことが大切です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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