産廃の収集運搬や処分に携わっていると、「廃棄物処理法さえ守ればよい」と考えがちです。しかし、廃棄物処理法はより上位の法律が定める理念に支えられており、その根幹にあるのが環境基本法(平成5年法律第91号)です。ここでは、環境基本法が廃棄物の「処分」という場面にどのように関わっているのかを整理します。

環境基本法の位置づけ

 環境基本法は環境行政全体の理念と基本施策を定める上位法です。廃棄物処理法・大気汚染防止法・水質汚濁防止法など、個々の環境関連法はいずれもこの基本法の理念を踏まえて制定・運用されています。廃棄物処理法第1条が掲げる「生活環境の保全」という目的は、環境基本法第1条が求める「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保」と軌を一にするものです。

環境基準(第16条)が処分の基準線になる

 環境基本法第16条は、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音について「人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」を国が定めることを規定しています。これが環境基準です。

(環境基準)第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

 環境基準はあくまで目標値であり、直接の罰則を伴う規制基準とは異なります。しかし、最終処分場の廃止確認の際に行われる地下水検査・浸出液処理基準・土壌汚染確認は、環境基準の達成状況を評価の根拠の一つとしています。処分業者が維持管理基準を守る意義は、廃棄物処理法上の義務を果たすためだけでなく、この「環境基準の維持」という目標を支えることにもあります。

事業者の責務(第8条)と処分行為

 環境基本法第8条は、事業者に「事業活動に伴って生ずる公害を防止し、自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務」を課しています。処分事業者にとっては、処分施設からの有害物質の漏出防止・浸出液の適正処理・廃止後の維持管理がこの責務の具体的な中身です。廃棄物処理法施行令第6条第1項が定める産業廃棄物の処分基準(第2号・第3号)は、この責務を個別具体的に落とし込んだルールといえます。

「処分は最終手段」という考え方のルーツ

 環境基本法第14条が掲げる「環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること」という指針は、最終処分場の構造基準・廃止基準の設計根拠になっています。また、この理念は循環型社会形成推進基本法にも引き継がれており、発生抑制・再使用・再生利用を処分より優先する廃棄物処理の優先順位の根拠にもなっています。

処分事業者が環境基本法を意識すべき理由

 廃棄物処理法の条文のみを意識していると、規制動向の背景にある考え方を見落とすことがあります。最終処分場の廃止後維持管理義務や地下水モニタリングの強化といった近年の規制強化は、環境基本法が描く「健康と生活環境の保全・将来世代への継承」という価値観を具体化したものです。個別法の条文を守るとともに、その上位に流れる理念を理解しておくことが、実務上の適切な対応につながります。

 廃棄物の適正処分は法律上の義務であると同時に、環境基本法が掲げる持続可能な社会への貢献でもあります。処分に関わる実務を進める際は、目の前の基準値だけでなく、その背景にある法の体系もあわせて意識してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

申請なら産廃収集運搬申請特化の行政書士吉田哲朗事務所にお任せ下さい。
個人事業主、法人のお客様問わず、たくさんのお問合せを頂いております。
JWセンターの収集運搬過程終了の行政書士による講習試験アドバイス
経理的基礎である財務把握はもちろん、中小企業診断士とタイアップ
最短3日で申請!

投稿者プロフィール

吉田哲朗
吉田哲朗