
「うちの社員が勝手にやったことだから、会社には関係ない」——そう思っていると、取り返しのつかない事態になるかもしれません。廃棄物処理法には両罰規定が設けられており、違反行為をした個人だけでなく、その法人も同時に処罰の対象となる仕組みになっています。収集運搬業を営む会社にとって、この規定は許可の存続にまで直結する非常に重大なルールです。ここでは、両罰規定の概要とともに、法人が具体的にどのようなリスクを負うのかを整理します。
両罰規定の根拠条文
廃棄物処理法第32条第1項は、次のように定めています。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
つまり、代表者・代理人・使用人・パートやアルバイトを含む従業員が業務に関して違反を犯した場合、その法人にも罰金刑が科されます。「個人が勝手にやった」という事情は、原則として法人の責任を免除しません。法人が監督・管理を怠っていたことが責任の根拠とされているため、現場を知らない経営者であっても、法的責任から逃れることはできないのです。
法人に科される罰金の上限額
個人が受ける刑事罰と法人への罰金刑は、別々に設定されています。たとえば、不法投棄・無許可営業・焼却禁止違反など第25条違反に該当する行為を従業員が業務上行った場合、個人には「5年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金」が科されますが、法人に対しては3億円以下の罰金が科される可能性があります(第32条第1項第1号)。法人に対する罰金額は、個人よりもはるかに重く設定されています。これは、企業組織を背景にした違反行為が社会に与える影響の大きさを反映したものです。なお、違反の種類によって法人への罰金上限は異なり、第26条から第30条に対応する違反では1億円以下または各条の罰金額が適用されます。
許可の取消しへの連動という深刻なリスク
両罰規定で法人が罰金刑を受けると、さらに深刻な結果が待っています。廃棄物処理法第14条第5項第2号ニは、「廃棄物処理法等の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わってから5年を経過しない者」を許可欠格事由として定めており、これに該当すると産業廃棄物処理業に関するすべての許可が必要的に取り消されることになります。取り消された後は、5年間にわたって新たな許可を取得することもできず、事業継続が不可能となります。従業員一人の違反行為が会社全体の事業消滅につながりうると、改めて認識しておく必要があります。
法人として取るべき対策
両罰規定によるリスクを回避するには、法人として日常的な法令遵守体制を整えることが不可欠です。具体的には、マニフェストの適正交付・保存、処理委託先の適切な選定、積替保管の基準遵守などについて、定期的な社内研修や作業手順の明文化を行うことが有効です。また、管理者が現場の状況をリアルタイムで把握できる報告ルートを確立しておくことも重要です。パートやアルバイトも対象となることを念頭に置き、雇用形態にかかわらず全員への周知徹底が求められます。「知らなかった」「部下がやった」では済まないのが両罰規定の厳しさです。日々の管理と教育の積み重ねが、会社と許可を守ることに直結します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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