
「汚染者負担の原則」という言葉は聞いたことがあっても、それが廃棄物処理法の具体的な条文にどう反映されているかを整理できている方は意外と少ないのではないでしょうか。理念として理解するだけでなく、実務上の義務や行政処分との結びつきを押さえておくことが、事業者として自社を守ることにつながります。ここでは法律の構造に沿って整理します。
汚染者負担原則とは何か
汚染者負担原則(Polluter Pays Principle:PPP)とは、環境を汚染した者がその除去・回復にかかるコストを負担すべきという考え方です。1972年にOECDが勧告で示して以来、各国の環境政策の基盤となっています。日本では環境基本法第8条で「事業者は、その事業活動に伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する」と定められており、この考え方が廃棄物処理法にも引き継がれています。
廃棄物処理法における排出事業者責任との対応
廃棄物処理法は、この原則を排出事業者責任という形で具体化しています。法第3条第1項は「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と明記しており、廃棄物を生み出した者=汚染者が処理コストを負うという原則の直接の表れです。処理を外部に委託する場合も、委託先は許可業者に限られ(法第12条第5項)、委託基準(同条第6項)への準拠と適正処理のために必要な措置を講ずる努力義務(同条第7項)を通じて、排出事業者は処理が適正に行われているかを確認する責任を負います。
不適正処理が起きたときの措置命令と費用負担
汚染者負担原則が実務上もっとも重く響くのは、不適正処理が発覚した場面です。廃棄物処理法第19条の5は、不法投棄などの不適正処理があった場合に、都道府県知事が処理業者だけでなく排出事業者に対しても措置命令を発することができると定めています。さらに同法第19条の6では、排出事業者が適正な対価を負担していなかったなど一定の要件を満たす場合に、処理業者に代わって措置命令が排出事業者に向けられる場合があります。処理費用を極端に安く抑えた委託がリスクになるのは、この条文の存在が背景にあります。
拡大生産者責任との関係
汚染者負担原則をさらに広げた考え方として、拡大生産者責任(EPR)があります。製品を製造・販売した事業者が、その製品の廃棄段階まで責任を負うという考え方で、容器包装リサイクル法・家電リサイクル法・自動車リサイクル法などに反映されています。産廃収集運搬業者がこれらの品目を扱う際は、単なる廃棄物処理法の問題にとどまらず、個別リサイクル法上の位置づけも確認することが重要です。
実務での意識の持ち方
排出事業者にとって汚染者負担原則の実践とは、適正な委託先の選定・適正な処理費用の負担・マニフェストによる確認という日常業務そのものです。収集運搬業者にとっては、委託基準を満たした適法な受託を行うことが、排出事業者の義務履行を支えることになります。「誰かがやってくれる」ではなく、自社が汚染者であるという自覚を持った管理体制を整えることが、コンプライアンスと事業継続の両面から自社を守ることにつながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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