
産業廃棄物収集運搬業の許可申請では、代表取締役や役員が申請者の中心となるのが一般的です。しかし、役員以外の使用人(従業員)が申請の要件を満たしている場合でも、許可を取得できるケースがあります。それが、廃棄物処理法施行令第6条の10に規定する「政令で定める使用人(政令使用人)」の活用です。ただし、この制度には独特の要件と実務上の落とし穴があります。申請を検討している方はぜひご一読ください。
1 政令第6条の10使用人とは何か
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の10は、施行令第4条の7を準用する形で政令使用人の定義を定めています。具体的には、「申請者の使用人で、本店・支店の代表者、または継続的に業務を行うことができる施設において廃棄物の収集運搬等の業に係る契約を締結する権限を有する者を置く場所の代表者」がこれに当たります。いわゆる営業所長・工場長・支店長など、現場の契約行為を担う責任者がイメージしやすいでしょう。
重要なのは、「役員(代表取締役・取締役等)」は使用人には含まれないという点です。つまり、役員でも政令使用人でもない一般従業員は、この制度の対象外となります。申請時に「誰が政令使用人に当たるか」を正確に把握しておくことが、審査の入口で躓かないための第一歩です。
2 講習会修了者は誰でなければならないか
産廃収集運搬業の許可を取得するには、JWセンター(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)の講習会を修了していることが求められます。法人が申請する場合、対象者は「代表者若しくは役員(監査役を除く)または政令第6条の10使用人」とされています。
つまり、政令使用人として申請する場合は、その政令使用人本人が講習会を受講・修了していなければなりません。役員とは別の人物が政令使用人として申請するケースでは、その人物の修了証が必要です。「役員が修了証を持っているから大丈夫」という誤解は多く、申請直前に発覚して申請が大幅に遅れる事例もあります。
3 欠格要件の審査対象に含まれる点に注意
許可申請において見落とされがちなのが、政令使用人も欠格要件の審査対象に含まれるという点です。廃棄物処理法第14条第5項第2号ニでは「法人でその役員または政令使用人のうちにイ・ロのいずれかに該当する者のあるもの」、同号ホでは「個人で政令使用人のうちにイ・ロのいずれかに該当する者のあるもの」が欠格要件として定められています。
主な欠格要件としては、禁錮(拘禁刑)以上の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者や、暴力団員等への該当、成年被後見人・被保佐人への該当などが挙げられます(2025年6月施行の刑法改正により、懲役・禁錮は「拘禁刑」に統一されています)。政令使用人として申請に関与する方についても、住民票の写しや登記されていないことの証明書(法務局発行)の提出が求められます。
4 「契約締結権限」の実態を証明できるか
政令使用人として認められるためには、単に肩書きが「支店長」であるだけでは不十分な場合があります。行政庁によっては、実際に廃棄物収集運搬業に係る契約を締結する権限が付与されていることを客観的に証明する書類の提出を求めます。「政令使用人に関する証明書」の様式を用いることが一般的ですが、都道府県によって様式や要求水準が異なるため、事前に申請先の手引きを確認しておくことが重要です。
また、登記事項証明書に氏名が記載されていない場合は、社内の辞令書・組織図・議事録などの裏付け資料を別途準備するよう求められることがあります。書面上の肩書きと実態が一致していることを丁寧に示すことが、審査をスムーズに通過するうえで不可欠です。
5 政令使用人が変更になった場合の届出義務
許可取得後も注意が必要です。登録した政令使用人が交代・退職した場合は、変更届出書を提出する義務があります(廃棄物処理法第14条の2第3項)。届出期限は原則として変更の日から10日以内ですが、法人で登記事項証明書の添付が必要な変更を伴う場合は30日以内とされています(施行規則第10条の10第2項)。人事異動が多い事業者は特に、許可情報の管理体制を整備しておくことをおすすめします。
政令第6条の10使用人という制度を正しく理解して活用することが、許可申請の失敗を防ぎ、事業をスムーズに開始・継続することにつながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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