「取引先の収集運搬業者が車両を貸してくれるというので、それを使って自社の産廃を運びたい」――現場ではこうした相談が時折持ち上がります。運搬車両さえあれば運べると思いがちですが、産業廃棄物の収集運搬には車両そのものではなく、業の許可が必要です。許可業者から車両を借りたとしても、自社に収集運搬業の許可がなければ産廃を運搬することはできません。この記事では、なぜそれが問題になるのか、そして許可業者側にも生じるリスクを整理します。

収集運搬業許可は「業者」に対して与えられるもの

 廃棄物処理法第14条第1項は、産業廃棄物の収集または運搬を業として行おうとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。許可は、人的要件・施設要件・経理的基礎などを審査したうえで、申請した法人や個人に対して付与されます。つまり、許可は業者に対して与えられるものであり、車両に付いてくるものではありません。許可業者から車両を借りてきたとしても、その許可の効力が借りた相手に及ぶことはなく、許可なく収集運搬を行えば無許可営業(同条第1項違反)に該当します。なお、収集運搬業の許可は積込みを行う都道府県ごとに必要であるという点も、あわせて確認しておきましょう。

許可業者側が問われる「名義貸し」とは

 車両を貸し出した許可業者側にも問題が生じます。廃棄物処理法第14条の3の3は、産業廃棄物収集運搬業者は自己の名義をもって他人に産業廃棄物の収集若しくは運搬を業として行わせてはならないと規定しています。これが名義貸しの禁止です。許可証のコピーを渡したり、自社名義で契約させたりする行為が典型例ですが、実態として無許可の者が自社の車両や名義を使って運搬しているような場合も同様に問題となります。名義貸しをした許可業者は第25条第1項第7号により、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象となり、許可の取消しという重大な行政処分を受けることにもなります。

車両の「重複登録」も認められない

 関連して注意が必要なのが、車両の重複登録の問題です。収集運搬業の許可申請では、業務に使用する車両を特定して届け出ます。すでに別の許可業者が届け出ている車両を、自社の申請でも使用車両として登録することは認められません。双方の業者が的確かつ継続して業を行えないことが理由です。許可業者間でも車両の共用が原則として認められないのですから、まして無許可の者が許可業者の車両を借りて運搬することは、なおさら許されません。また、収集運搬車両には業者名・許可番号の表示義務があります。他社の許可番号が表示された車両で運搬した場合、その表示内容も事実と異なるものとなります。

適法に対応するための選択肢

 自社で産業廃棄物を運搬したい場合は、収集運搬業の許可を自ら取得する必要があります。排出事業者が自らの産業廃棄物を自ら運搬する場合は許可不要ですが、それ以外の場合、すなわち業として収集運搬を行う場合には許可が求められます。一方、他社に運搬を依頼するのであれば、正規の委託契約を締結して許可業者に委託することが唯一の適法な手段です。車両の貸し借りで許可要件を回避しようとする方法は、どのように整理しても違法状態を招くことになります。適正な処理体制を整えることが、自社の事業と信頼を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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