建物の解体工事を前にして、こんな疑問をお持ちではないでしょうか。「前の入居者が置いていった家具や荷物は、だれが片付けるのか」「産廃業者に頼めばまとめて処理してもらえるのか」。これは実務の現場でも混乱が生じやすいテーマです。残置物の取り扱いを誤ると、廃棄物処理法違反につながるリスクがあります。今回は、環境省通知をもとに整理してみます。

残置物とは何か

 建物の解体工事に際して生じる廃棄物は、大きく2種類に分けられます。ひとつは解体工事そのものによって発生するもの(木くず、がれき類など)で、これを「解体物」と呼びます。もうひとつが、解体前に建物の所有者や元入居者が残していった荷物や家財などの廃棄物で、これが「残置物」です。一見すると同じ「建物から出たもの」に見えますが、法律上の取り扱いはまったく異なります。

処理責任は「だれが出したか」で決まる

 環境省は平成30年6月22日付の通知(環循適発第1806224号)において、残置物の処理責任について明確に示しています。解体物の処理責任は解体工事の元請業者にありますが、残置物の処理責任は当該建物の所有者等にあります。つまり、解体業者は残置物についての処理責任を負わないのが原則です。建物の解体を行う前に、所有者等が自ら残置物を適正に処理しておく必要があります。

残置物は産廃と一般廃棄物のどちらになるか

 残置物が廃棄物処理法上の「産業廃棄物」と「一般廃棄物」のどちらに該当するかは、だれが排出するかによって変わります。環境省通知では次のように整理されています。

一般家庭が排出する場合は一般廃棄物となり、事業活動を行う者が排出する場合は当該廃棄物の種類及び性状により一般廃棄物又は産業廃棄物となる。 (環循適発第1806224号・平成30年6月22日)

 たとえば、賃貸マンションの元入居者が個人であれば、残していった家財は一般廃棄物です。一方、テナントビルの元入居者が法人(飲食店・事務所など)であれば、事業活動に伴い排出されたものとして、廃棄物の種類によっては産業廃棄物に該当する場合があります。また、元入居者が所在不明で建物の所有者(ビルオーナー等)が排出者となる場合も、事業活動に伴う排出として同様の整理になります。

処理を依頼する業者の許可に注意が必要です

 重要なのは、残置物が一般廃棄物に該当する場合、産業廃棄物収集運搬業の許可だけでは処理を受託できないという点です。環境省通知も「産業廃棄物処理業の許可を取得していることのみでは足りず、市町村からの当該残置物の処理に係る委託又は一般廃棄物処理業の許可を受けなければならない」と明記しています。解体工事業者や産廃業者がまとめて引き受けてしまうケースは現場では見受けられますが、これは廃棄物処理法上の問題につながりえます。依頼する前に、処理業者が適切な許可を持っているかを必ず確認するようにしてください。

リフォーム工事でも同じ考え方が適用される

 なお、上記の考え方は建物の解体時に限りません。リフォーム工事など解体を伴わない場合にも、建物所有者等が残置した廃棄物の処理責任は所有者等にある、と環境省通知は明示しています。「工事業者が全部やってくれる」という思い込みは危険です。工事発注前に残置物の有無を確認し、必要に応じて適切な許可を持つ業者に処理を依頼することが求められます。

まとめ

 残置物の処分は、「だれが排出したか」によって処理責任と廃棄物の区分が決まります。一般廃棄物に該当する残置物について許可の確認を怠ると法令上の問題につながりうる点を、発注者・施工業者の双方が理解しておくことが大切です。適正な処理の流れを事前に確認しておくことが、トラブルを防ぎ、事業を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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