産業廃棄物処理業は、廃棄物処理法に基づく許可を得て運営される事業ですが、従業員の安全を守るためには、廃棄物処理法とは別に労働安全衛生法(以下「安衛法」)の遵守が不可欠です。収集運搬や中間処理の現場では、重機操作・有害物質への接触・焼却炉の保守など、危険を伴う業務が数多く存在します。許可を維持しながら現場を安全に運営するために、安全衛生管理の基本的な仕組みを確認しておきましょう。

安全衛生管理体制の整備

 安衛法は、事業場の規模や業種に応じて、安全衛生管理者等の選任を事業者に義務付けています。産業廃棄物処理業は「清掃業」に分類されるため、常時100人以上の労働者を使用する事業場では総括安全衛生管理者(安衛法第10条・施行令第2条第1号)を、50人以上では安全管理者・衛生管理者(同法第11条・第12条)をそれぞれ選任し、労働基準監督署長に報告する必要があります。また、10人以上50人未満の比較的小規模な事業場でも、安全衛生推進者(同法第12条の2)の選任が求められます。これらの体制整備を怠った場合、安衛法第120条の規定により50万円以下の罰金が科されることがあります。多くの産廃処理業者は中小規模であるため、まず自社の労働者数を把握し、選任義務の有無を確認することが出発点です。

産廃業で特に重要な特別教育

 安衛法第59条第3項は、危険または有害な業務に労働者を就かせる場合、事業者は特別教育を実施しなければならないと定めています。特別教育の対象業務は労働安全衛生規則第36条に列挙されており、産廃業の現場に密接に関わる業務が複数含まれます。具体的には、廃棄物の焼却施設においてばいじん・焼却灰等の燃え殻を取り扱う業務(同条第34号)、廃棄物焼却炉・集じん機等の設備の保守点検等の業務(同条第35号)、さらに設備の解体等に伴う業務(同条第36号)が該当します。第34号は2019年4月施行の改正で新たに追加されたものです。さらに、車両系建設機械(機体重量3トン未満)の運転や、フォークリフト(最大荷重1トン未満)の運転なども特別教育の対象です。特別教育を実施しないまま労働者を当該業務に従事させた場合は罰則の対象となるため、未受講者がいないか定期的に確認しましょう。

健康診断と保護具の管理

 産廃業の従業員には、雇入れ時および定期的な健康診断(安衛法第66条)が義務付けられています。ばいじんや有害化学物質を取り扱う業務では、粉じん障害防止規則や特定化学物質障害予防規則に基づく特殊健康診断が追加で必要になる場合もあります。また、有害物質へのばく露リスクがある作業では、適切な保護具(防じんマスク・防毒マスク・保護手袋等)を選定・支給し、正しく使用させることが事業者の責務です。2024年4月施行の改正安衛法では、化学物質のリスクアセスメントの強化とともに保護具着用管理責任者の選任も義務付けられましたので、対象となる事業者は対応状況を確認してください。

労働災害発生時の対応と記録

 万が一、現場で労働災害が発生した場合、事業者は被災者に労働者災害補償保険(労災保険)を適用するとともに、所定の手続きを行う必要があります。死亡災害や休業を伴う労働災害が発生した場合は、労働者死傷病報告(労働安全衛生規則第97条)を遅滞なく所轄の労働基準監督署長に提出しなければなりません。また、ヒヤリ・ハット事例を含む安全衛生活動の記録を蓄積し、同種の事故再発を防止するための作業手順書を整備しておくことが、現場の安全文化を高める上で重要です。産廃業の許可取消要件の一つには「不正の手段」が挙げられますが、重大な労働災害が繰り返される事業者は行政からの注目を集めることにもなります。安全衛生管理の徹底が、事業継続の基盤を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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