「これは有価物だから廃棄物処理法の規制を受けない」という主張は、現場でもしばしば耳にします。しかし行政実務では、「有価物だと主張すれば即座に認められる」わけではありません。廃棄物の疑いがある物については、環境省の通知に基づく複数の判断要素を総合的に検討したうえで、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うとされています。ここでは、廃棄物該当性の判断構造を実務担当者向けに整理します。

「不要物」かどうかが出発点

 廃棄物処理法(以下「法」)第2条第1項は、廃棄物を「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの」と定義しています。ポイントは末尾の「不要物」という概念です。何が「不要物」にあたるかについて、昭和52年の厚生省通知(環計第37号)以来、判例・行政実務は総合判断説を採用してきました。物の性状や取引実態など複数の要素を組み合わせて客観的に評価するという考え方で、最高裁平成11年3月10日決定でも支持されています。

環境省通知が示す5つの判断要素

 平成25年3月29日付け環境省通知(環廃産発第1303299号「行政処分の指針について」)は、廃棄物の疑いがある物の該当性を判断するための要素として、以下の5点を総合的に勘案することを明示しています。

 ①物の性状――利用用途に求められる品質を満たしており、飛散・流出・悪臭の発生など生活環境保全上の支障が生じるおそれがないこと。②排出の状況――排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前・排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。③通常の取扱い形態――製品として市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。④取引価値の有無――有償での譲渡が行われており、客観的にみて取引に経済的合理性があること。⑤占有者の意思――適切に利用または有償譲渡する意思があり、みだりに放置・処分する意思がないこと。これら5要素はいずれかひとつで廃棄物に該当しないと結論づけられるものではなく、すべてを総合して判断されます。

「有価物抗弁」が認められないケース

 同通知は、安易に有価物と認定することを戒める趣旨を明確にしています。実務上とくに注意が必要なのは「取引価値の有無」だけを強調するケースです。たとえば、金属市況の変動によって有償引取りと処理料金受領を繰り返す場合、市況が下落した時点で有償性の要件を満たさなくなり、廃棄物として扱われる可能性があります。また、有償で売却しているとしても、保管場所が劣悪で飛散・流出のおそれがあれば「物の性状」の要件を欠くため、有価物とは認められません。「占有者が有価物と思っている」という主観的意思だけでは不十分であり、客観的な取引実態と管理状況が伴っている必要があります。

「廃棄物」と判断されたときのリスク

 廃棄物に該当するにもかかわらず、無許可で収集・運搬・処分を行った場合は、廃棄物処理法第25条により5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(またはその両方)が科されます。2025年6月施行の刑法改正により「懲役・禁錮」は「拘禁刑」に統一されています。また法人では両罰規定(法第32条)により3億円以下の罰金が法人にも科される可能性があります。行政処分においても、改善命令・措置命令・許可取消しの対象となりえます。

実務での対応ポイント

 自社で扱っている物が廃棄物に該当するかどうか不安なときは、①取引の有償性を契約書・領収書で客観的に証明できるか、②保管・品質管理の状況を記録として残せているか、③継続的な需要先が明確に存在するか、という3点を日常的に確認しておくことが大切です。「有価物として管理している」という自社の認識と、行政が評価する客観的な取引実態・管理実態が一致していることが、法的リスクを避けるための要となります。疑義がある場合は、早い段階で所轄の都道府県または政令市の産業廃棄物担当窓口に相談することが、事業を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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