
産業廃棄物の収集運搬を行う事業者は、許可を取得して依頼を受ければそれで終わり、と思っていませんか。実はそうではありません。廃棄物処理法は収集運搬業者に対しても複数の責任を課しており、違反があれば改善命令・措置命令・許可取消し・刑事罰と、段階的に重い結果が待っています。ここでは、収集運搬業者が知っておくべき法的責任の構造を整理します。
基本義務:処理基準の遵守(法第14条第13項)
収集運搬業者が負う基本的な義務は、廃棄物処理法第14条第13項が定める処理基準の遵守です。具体的な内容は施行令第6条第1項第1号に規定されており、飛散・流出の防止、車両への法定表示、運搬容器の要件、積替保管を伴う場合の措置などが含まれます。この基準は収集運搬業者だけでなく自ら産業廃棄物を運搬する排出事業者にも適用されますが、業として収集運搬を行う許可業者にとっては許可の根幹に関わる義務です。日々の業務の中で処理基準を意識し続けることが、適正事業者としての第一歩となります。
改善命令(法第19条の3)
処理基準または保管基準に違反した収集・運搬が行われたとき、都道府県知事等は廃棄物処理法第19条の3に基づき改善命令を発することができます。改善命令の対象は排出事業者・処理業者のいずれにも及びますが、収集運搬業者が基準に違反した状態で運搬を継続している場合はその主体として命令を受けます。命令に従わなかった場合は罰則の適用があります。改善命令は、行政が許可業者に対して事業の是正を求める最初の法的手段に位置づけられています。
措置命令(法第19条の5)
さらに重大なのが措置命令です。処理基準に適合しない処分(不法投棄等)が行われ、生活環境の保全上支障が生じまたは生ずるおそれがある場合、都道府県知事等は廃棄物処理法第19条の5に基づき、その処分を行った者や委託基準違反により委託を行った者に対し、支障の除去等の措置を命ずることができます。収集運搬業者自身が不法投棄等の処理基準違反を行った場合、まさにこの命令の対象となります。原状回復にかかる費用は莫大になることもあり、事業の存続を左右する重大なリスクです。
刑事罰(法第25条・第32条)
処理基準違反や措置命令違反に対しては、廃棄物処理法第25条以下の罰則が定められています。たとえば措置命令に違反した場合は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります(同法第25条第1項第5号)。不法投棄や不法焼却を目的として廃棄物を収集・運搬した行為も同様の刑事罰の対象となります。また、法人の従業員が業務上違反行為を行った場合、行為者本人に加えて法人にも罰則が科される両罰規定が設けられており(同法第32条)、不法投棄・不法焼却については法人に対して3億円以下の罰金が科されうる点も見逃せません。
許可の取消し(法第14条の3の2)
許可の取消しも重大なリスクのひとつです。欠格要件への該当、情状が特に重い違反行為、事業停止命令への違反、不正の手段による許可取得などがあった場合には、廃棄物処理法第14条の3の2第1項に基づき許可が取り消されます。許可を失えば業として収集運搬を継続することはできなくなりますから、事業者にとって最も深刻な行政上の結果です。
まとめ
収集運搬業者の責任は、許可取得後も継続するものです。処理基準の日常的な遵守、車両・容器の適正管理、マニフェストの適正交付、そして委託先処分業者の状況把握まで、一連の業務プロセスにわたって継続的な注意が求められます。法令を正確に理解し適正な収集運搬を積み重ねることが、事業の継続と社会的信頼の維持につながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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