許可はそのまま引き継げない

 個人事業主として産業廃棄物収集運搬業の許可を取得したあと、事業拡大に伴って法人を設立するケースは少なくありません。ただし、ここで気をつけたいのが、個人として受けた許可は法人にそのまま引き継げないという点です。法律上、個人と法人はまったく別の主体として扱われるため、法人成りをした場合は法人としてあらためて許可を取り直す必要があります。

個人の許可は廃止届で終わらせる

 個人として受けていた許可は、事業を廃止した際の届出によって終了させます。根拠となるのは廃棄物処理法第14条の2第3項で、一般廃棄物に関する第7条の2第3項の規定を準用する形で、収集運搬業を廃止したときの届出義務が定められています。

廃棄物処理法第14条の2第3項において準用する同法第7条の2第3項の規定により、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の全部を廃止したときは、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

 届出の期限は廃止の日から10日以内とされており、法人設立に伴って登記事項証明書の添付が必要になる場合は30日以内となります。うっかり届出を忘れると、実態のない許可が残ったままになってしまうため注意が必要です。

廃止と新規許可のタイミングが最大のポイント

 実務上とくに重要なのが、廃止届と新規許可申請のタイミング調整です。法人としての新規許可には一定の審査期間がかかるため、個人の許可を先に廃止してしまうと、法人の許可が下りるまでの間、収集運搬を行える許可が誰にもない「空白期間」が発生しかねません。この状態で運搬業務を続けてしまうと、無許可営業として重い責任を問われるおそれがあります。

 そのため、法人の許可が実際に交付されたことを確認してから、個人の許可について廃止届を提出する進め方が安全です。ただし届出には期限があるため、廃止のタイミングを逆算し、計画的にスケジュールを組んでおくことが欠かせません。

新規許可の審査で改めて問われること

 法人としての新規許可申請では、経理的基礎・講習修了者の有無・車両や施設の体制などがあらためて審査されます。設立から間もない法人で決算書が3期分そろわない場合は、中小企業診断士による経営診断書の添付を求められることもあるため、早めの準備が安心につながります。

許可の切り替え後に整えるべき実務

 新しい許可番号が付与された後は、収集運搬車両に表示している許可番号の貼り替えが必要になります。また、排出事業者との委託契約書やマニフェストに記載されている許可情報も、個人名義から法人名義へすべて更新しなければなりません。紙マニフェストであれば伝票の記載事項を、電子マニフェストを利用している場合は情報処理センターに登録している契約者情報や事業者コードを、法人名義に切り替える手続きが必要になります。取引先には法人成りのスケジュールを早めに伝えておくと、契約更新の手続きもスムーズに進みます。

 法人成りは事業拡大に向けた大きな一歩ですが、許可の切り替えには思っている以上に段取りが必要です。廃止と新規取得のタイミングを丁寧に管理しながら進めることが、事業を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄5丁目19-31 T&Mビル3F-3X
行政書士吉田哲朗事務所
吉田 哲朗
TEL052-380-3173
Mobile:090-6090-0386
Email:info@office-yoshida-te.com
Facebook
Instagram
X(Twitter)

YouTube

投稿者プロフィール

吉田哲朗
吉田哲朗