「うちは赤字決算が続いているから、産業廃棄物収集運搬業の許可は取れないのでは」と不安になる排出事業者や運搬業者の方は少なくありません。結論から言うと、赤字=即不許可というわけではなく、一定の条件下では経営診断書という書類を提出することで許可取得の道が開けます。ただし、その中身や扱いは自治体によって差があるため、ここではQ&A形式で実務のポイントを整理します。

Q1.赤字だと収集運搬業許可は本当に取れないのですか?

 産業廃棄物収集運搬業の許可には、廃棄物処理法第14条第5項第1号に基づき「事業を的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」が求められます。この基準は環境省通知(平成4年衛環第233号・平成12年衛産第79号)を拠り所として全国の自治体で運用されており、直近決算が赤字であることが自動的に不許可を意味するわけではありません。ただし債務超過や納税状況の不備が重なると、審査で「経理的基礎なし」と判断されるリスクが高まります。

Q2.経営診断書(財務診断書)とは何ですか?

 経営診断書とは、中小企業診断士(自治体によっては公認会計士・税理士も可)が、直近3期分の決算書などをもとに外部環境分析・内部環境分析・収益分析を行い、今後の収支改善見通しを客観的に示す書類です。東京都では「経理的基礎を有することの説明書」という名称で運用されています。作成にあたっては窮境に至った原因の分析と具体的な改善アクションプランの記載が重視される傾向があります。

Q3.診断書さえ提出すれば必ず許可されますか?

 ここは誤解が多い点です。診断書はあくまで判断材料の一つであり、提出すれば自動的に許可が下りるものではありません。改善策の実現可能性が乏しいと判断されれば、診断書を提出しても不許可となる可能性があります。かつては形式が整っていれば通りやすかった時期もありましたが、近年は収益改善策の具体性まで踏み込んで審査する自治体が増えている点に注意が必要です。

Q4.都道府県によって扱いはどう違いますか?

 診断書の提出を求める条件自体が自治体ごとに異なります。たとえば東京都は「法人税の納税状況」と「債務超過」の両方に該当した場合に提出義務が生じる運用ですが、愛知県は「経常利益金額等(経常利益に減価償却費を加えた額)」の直近3年間の平均や直前期の状況を基準の一つとしています。同時に複数の都道府県へ申請した場合、一部の自治体からのみ診断書提出を求められるケースも珍しくありません。申請前に必ず各自治体の「申請の手引き」で基準を確認することが欠かせません。

Q5.経営診断書の作成にはどれくらい費用と時間がかかりますか?

 依頼先によって幅がありますが、目安となる相場は10万円〜30万円程度とされています。作成の流れとしては、直近3期分の決算書や試算表などの資料をもとに中小企業診断士がヒアリングを行い、外部環境分析・内部環境分析を踏まえて診断書をまとめるという手順が一般的です。納期は2〜3週間程度が目安とされていますが、自治体の審査スケジュールに間に合わせる必要があるため、赤字や債務超過の可能性に気づいた時点で早めに動き出すことが重要です。

Q6.設立から3年経っていない法人はどうなりますか?Q6.設立から3年経っていない法人はどうなりますか?

 直近3期分の決算書が揃わない新設法人への対応は、自治体によって方向性が分かれます。決算実績が乏しいことを理由に、かえって経営診断書の提出を求められる自治体がある一方、経営診断書そのものは不要とし、代わりに申立書など別の書類提出を求める自治体もあります。「新設法人だから緩和される」と一律には言えないため、開業直後に収集運搬業許可を申請する場合は、決算書の不足をどう補うかを事前に管轄窓口へ確認しておくことが欠かせません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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