なぜ「判断」がここまで重視されるのか

 掘削工事の現場で、目の前にある掘り出し物を「土砂」として扱ってよいのか、それとも「汚泥」として産業廃棄物の手続きに乗せるべきか、迷った経験のある方は少なくないはずです。見た目が似ていても、法律上の扱いはまったく異なります。土砂であれば廃棄物処理法の対象外ですが、汚泥と判断される場合は収集運搬・処分の許可を持つ業者への委託や、マニフェストの交付が必要になります。この線引きを誤ると、現場の作業そのものが違法な処理になってしまうおそれがあるのです。

判断の基準はどこにあるのか

 国の通知では、標準仕様のダンプトラックに山積みできず、その上を人が歩けない状態を「泥状」と呼び、この状態を土の強度で示すとコーン指数がおおむね200kN/㎡以下、または一軸圧縮強度がおおむね50kN/㎡以下であるとされています。

泥状の状態とは、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態をいい、この状態を土の強度を示す指標でいえば、コーン指数がおおむね200kN/㎡以下又は一軸圧縮強度がおおむね50kN/㎡以下である。(環廃産第110329004号 平成23年3月30日「建設廃棄物処理指針(平成22年度版)」)

 この基準はあくまで目安であり、数値を単独で機械的に当てはめれば足りるというものではありません。現場の性状を総合的に見て、泥状かどうかを実際に確認する姿勢が求められます。

見落としやすいのは「運搬中の変化」

 積み込みの時点では泥状を呈していなくても、運搬中の振動や練り返しによって流動性のある泥状に変わってしまうケースがあります。この場合、積み込み時の状態だけを根拠に「土砂だから問題ない」と判断するのは危険です。国の通知でも、こうした掘削物は「汚泥」として取り扱う必要があると明記されています。判断のタイミングは、あくまで掘削工事に伴って排出される時点を基準に、その後の性状変化まで見越して行う必要があります。例えば、含水率の高い地盤を掘削する工法や、泥水を使うシールド工法などでは、積み込み直後は問題なくても、輸送時間や振動の影響で性状が変わりやすい傾向があります。こうした工法の特性を事前に把握しておくことも、判断の精度を上げる助けになります。

誤判断がもたらす具体的なリスク

 土砂と思って一般の残土として搬出したものが実は汚泥に該当していた場合、無許可での産業廃棄物処理とみなされる可能性があります。これは排出事業者・運搬事業者の双方に及び得る問題で、行政指導や罰則の対象になるおそれもあります。特に元請・下請が関与する現場では、責任の所在が曖昧なまま作業が進みがちなので注意が必要です。さらに、誤って一般の土砂として搬出・処分してしまった場合、後から発覚しても原状回復が難しく、是正指導や取引先からの信頼低下につながることもあります。目先の効率だけを優先せず、判断の根拠を都度確認しながら進める姿勢が欠かせません。

現場でできる実務上の備え

 迷いやすい現場ほど、排出時点の性状を写真や記録で残しておくことが有効です。含水状態や山積みの可否といった具体的な様子を記録しておけば、後から判断の妥当性を説明できます。判断に自信が持てない場合は、自己判断で処理を進めず、許可行政庁や専門家への事前相談を選択肢に入れることをおすすめします。

おわりに

 土砂と汚泥の境界は、数値基準だけでは割り切れない現場ごとの個別事情が関わってきます。基準を知ったうえで、排出から運搬までの一連の流れを見据えた判断を積み重ねていくことが、適正処理への近道と言えるでしょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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