
解体工事の現場で「これは石綿含有産業廃棄物ですか、それとも廃石綿等ですか」と聞かれて、答えに迷ったことはないでしょうか。どちらもアスベスト(石綿)を含む廃棄物という点は共通していますが、法律上の位置づけはまったく別物です。区分を誤ると、必要な許可を持たないまま運搬・処理を行ってしまう危険もあるため、実務上の違いを正しく押さえておくことが欠かせません。
区分の基準は「含有の有無」ではなく「飛散性」
両者を分ける最大のポイントは、石綿を含んでいるかどうかではなく、飛散しやすい状態にあるかどうかです。吹付け石綿のように繊維が空気中に飛散しやすいものは「廃石綿等」として特別管理産業廃棄物に区分され、成形板やビニル床タイルのように石綿が固定化されていて飛散しにくいものは「石綿含有産業廃棄物」として扱われます。この判断は建材の種類や工事の方法によって左右されるため、事前調査の結果をもとに慎重に見極める必要があります。
石綿含有産業廃棄物とは
石綿含有産業廃棄物は、工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するものと定義されています。中間処理については、破砕を伴う方法は禁止され、溶融施設による溶融又は無害化処理のいずれかによることとされています。
廃石綿等とは
廃石綿等は特別管理産業廃棄物に位置づけられ、飛散防止のためのより厳格な基準が課されます。最終処分では、あらかじめ固型化・薬剤による安定化などの措置を講じたうえで、耐水性の材料による二重こん包を行い、埋立処分することが求められます。保管の段階から一般の産業廃棄物とは区分し、特別管理産業廃棄物管理責任者のもとで取り扱う体制が必要です。
収集運搬業の許可はどちらを取ればよいか
実務上とくに注意したいのが収集運搬業の許可区分です。廃石綿等を運搬する場合は「特別管理産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要となり、運搬車両には許可証の写しやマニフェストの携行など、通常の産業廃棄物にはない要件が加わります。一方、石綿含有産業廃棄物は「産業廃棄物収集運搬業」の許可の範囲で対応しますが、破砕しない方法での運搬や他のものと混合しない区分保管など、処理基準上の制約は別途存在します。
区分を誤った場合のリスク
実際の解体現場では、見た目だけでは廃石綿等と石綿含有産業廃棄物を判別できないケースも少なくありません。誤った区分のまま運搬・処理を委託してしまうと、無許可営業や処理基準違反にあたるおそれがあり、委託した排出事業者の責任も厳しく問われます。事前調査結果や解体方法の記録を確実に残し、委託先の許可区分と照合しておくことが、リスクを避ける第一歩になります。
まとめ
名称は似ていても、「石綿含有産業廃棄物」と「廃石綿等」では必要な許可の種類も処理の方法もまったく異なります。解体・改修工事に伴って発生する廃棄物を扱う際は、事前調査の結果をもとにどちらに該当するかを慎重に見極め、区分に応じた許可と処理基準を確認したうえで対応することが、事業者責任を果たす第一歩となります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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