
会社を後継者に引き継ぐとき、あるいは他社との合併や事業譲渡を検討するとき、「今持っている産業廃棄物収集運搬業許可も、そのまま相手に引き継げるのだろうか」という疑問を持つ方は少なくありません。個人事業主が法人成りする場合にも、同じ疑問が生まれます。結論からいえば、収集運搬業の許可は原則として譲渡・承継ができません。この記事では、その根拠と実務上の注意点を整理します。
許可は「会社・個人」に与えられているもの
産業廃棄物収集運搬業の許可は、廃棄物処理法第14条第1項に基づき、都道府県知事が申請者ごとに与えるものです。同条第5項では、許可を出すかどうかの判断基準として、施設に係る基準と申請者の能力に係る基準の両方を審査することが定められています。
第14条第5項 都道府県知事は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二 申請者が次のいずれにも該当しないこと(欠格要件、以下略)。
さらに施行規則第10条では、申請者の能力について「知識及び技能」「経理的基礎」を有することが求められています。つまり許可は、車両や施設だけでなく、その会社・その個人の実態に対して与えられているものであり、他者に簡単に引き継げる性質のものではありません。
「処理施設の許可」との違いに注意
廃棄物処理法には、産業廃棄物処理施設の設置許可(第15条の4)について、施設の譲り受け・借り受けや、法人の合併・分割による地位の承継を認める仕組みがあります。これは施設という「モノ」に着目した許可制度だからです。一方、収集運搬業許可・処分業許可にはこうした承継の規定が置かれていません。同じ「産廃の許可」でも、性質が異なる点に注意が必要です。
実務でよくあるケースの整理
まず個人事業主が法人化する場合です。個人と法人は法律上別人格ですから、既存の許可を引き継ぐことはできず、新たな法人として新規に許可を申請する必要があります。
次に株式譲渡による事業承継やM&Aです。この場合は許可を受けた法人格そのものは変わらないため、許可自体は存続しますが、代表者や役員が交代すれば変更届の提出が必要になります。これに対し、合併・会社分割・事業譲渡によって許可を受けた法人とは別の法人が事業を引き継ぐ場合は、その別法人が改めて新規許可を取得しなければなりません。
「許可を譲ってもらえる」「そのまま名義変更できる」といった説明を受けた場合は、実態を慎重に確認することが重要です。誤った理解のまま事業を進めると、無許可営業の状態を招きかねません。特に合併や事業譲渡は、契約上の手続きが先行しがちで、許可の新規取得にかかる審査期間が後回しになりやすい点にも注意が必要です。
排出事業者の立場からも、委託先の体制が変わる際には「許可番号や許可の内容に変更がないか」を確認しておくと安心です。事業承継やM&Aを検討する段階から、許可の要否を含めたスケジュールを組み立てておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、 公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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