使用済自動車を扱う事業者から、「自動車リサイクル法の登録さえ受けていれば、廃棄物処理法の許可は不要なのか」という質問を受けることがあります。実務上この点を整理せずに事業を始めると、思わぬ許可漏れにつながりかねません。本稿では、引取業者・フロン類回収業者を中心に、両法の適用関係を整理します。

使用済自動車等はすべて廃棄物とみなされる

 まず前提として、使用済自動車、解体自動車、特定再資源化物品(フロン類・エアバッグ類・シュレッダーダストなど)は、経済的価値の有無にかかわらず、すべて廃棄物処理法上の廃棄物とみなされます。したがって、これらを取り扱う行為は、本来であれば廃棄物処理法上の収集運搬業・処分業の許可を要する行為に該当します。

引取業者・フロン類回収業者に認められる特例

 もっとも、自動車リサイクル法は、この原則に対して重要な特例を設けています。自動車リサイクル法第122条により、引取業者及びフロン類回収業者は、都道府県知事等の登録を受けている場合、使用済自動車等の引取り・引渡しに関して、廃棄物処理法上の一般廃棄物・産業廃棄物収集運搬業の許可を別途取得する必要はないとされています。自動車リサイクル法の登録が、廃棄物処理法の許可に代わる機能を果たす仕組みです。

 ただし、許可が不要になるからといって、廃棄物処理法の規律から完全に外れるわけではありません。同条の規定により、引取業者及びフロン類回収業者は、一般廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物収集運搬業者とみなされ、廃棄物の処理基準や名義貸しの禁止といった規制の適用を受けます。登録を受けた業者であっても、保管基準・運搬基準を遵守する義務は変わらない点に注意が必要です。

特例が及ぶ範囲は「自らの引取り分」に限られる

 この特例には、見落としやすい範囲の限定があります。許可不要となるのは、あくまで自らが引取りを行った使用済自動車についてのみです。したがって、使用済自動車の運搬を他人に委託する場合は、通常の産業廃棄物と同様に収集運搬業許可を持つ事業者への委託が必要になります。また、他の引取業者が引き取った使用済自動車の運搬を受託する場合も、収集運搬業許可が別途必要です。「自動車リサイクル法の登録があれば何でも運べる」という理解は誤りですので、注意してください。

委託契約書・マニフェストの取扱い

 なお、自動車リサイクル法第122条第13項により、事業者が引取業者に使用済自動車(産業廃棄物に該当するもの)を引き渡す場合など、一定の引渡しについては、廃棄物処理法上の委託基準の適用が除外されます。引取業者からフロン類回収業者又は解体業者への引渡しについても、委託契約書の締結や産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付は不要とされています。もっとも、この特例が及ぶ範囲は限定的であり、対象となる引渡し先・品目を誤解すると、委託基準違反のリスクが残る点には留意が必要です。

解体業者・破砕業者の扱い

 一方、解体業者及び破砕業者は、自動車リサイクル法上、都道府県知事等の許可制とされています。これらの事業者についても同様に、登録・許可を受けていれば廃棄物処理法上の許可は別途不要となりますが、処理基準等の適用を受ける点は引取業者等と共通しています。解体業者が解体自動車を第三者に運搬委託する場合には、通常の産業廃棄物と同様に、収集運搬業許可を有する者との委託契約が必要になる場面がある点も押さえておきたいところです。

無登録・無許可のリスク

 自動車リサイクル法の登録・許可を受けずに使用済自動車等の引取りや処理を行った場合、廃棄物処理法上の無許可営業とみなされ、5年以下の拘禁刑又は1000万円以下の罰金という重い罰則の対象となり得ます。使用済自動車を扱う際は、自動車リサイクル法上の手続きと廃棄物処理法上の位置づけの両方を確認することが欠かせません。

 自動車リサイクル法の登録・許可制度は、廃棄物処理法の許可そのものは不要にする一方で、処理基準の遵守義務や範囲の限定までは免除しません。両法の関係と特例の及ぶ範囲を正確に理解しておくことが、適正な事業運営を続けることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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