個人で産業廃棄物収集運搬業の許可を取り、いよいよ車両にマグネットシートを貼ろうという段階で、「せっかくだから屋号を大きく入れたい」と考える方は少なくありません。ところが、車体表示で求められているのは屋号ではなく氏名、つまり本名です。ここを取り違えたまま走行していると、立入検査で指摘を受けることになります。ここでは、その理由と実務上の対応を整理します。

表示すべき事項は施行規則が定めている

 車体表示の根拠は、廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号イと、これを受けた施行規則第7条の2の2です。許可業者が委託を受けて運搬する場合、車体の両側面に鮮明に表示すべき事項は、次のとおり定められています。

 三 産業廃棄物収集運搬業者 産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨、氏名又は名称及び許可番号(下六けたに限る。)(廃棄物処理法施行規則第7条の2の2第1項第3号)

 ここで注目したいのが「氏名又は名称」という文言です。氏名は個人の本名を、名称は法人名を指しています。屋号や商号は、条文が想定する表示事項には含まれていません。

許可を受けているのは「個人」だからです

 個人事業主の場合、許可を受けているのは屋号という組織ではなく、事業主本人です。許可証にも個人名が記載されます。車体表示は、走行中の車両を見た行政や取引先が、その車両の運搬主体を許可証と照合して特定できるようにするための仕組みです。屋号だけを掲げてしまうと、許可を受けた主体と車体の表示が一致せず、照合ができなくなってしまいます。表示は許可証の記載どおりにするのが原則、と覚えておくと迷いません。

屋号を併記することはできるのか

 この点の案内は自治体によって差があります。表示例のなかで「氏名又は名称(屋号は不可)」と明記している自治体がある一方、「屋号単独での表示は認められません。氏名は必ず記載してください」として、氏名を正しく表示していれば屋号の併記までは否定していない自治体もあります。いずれにしても共通しているのは、氏名の表示は省略できないという点です。なお、屋号を目立たせた結果、氏名や許可番号が3.2センチ以上という文字サイズの基準を下回っては本末転倒です。屋号を入れたい場合は、事前に許可を受けた行政庁へ確認しておくのが確実です。

表示の不備が招くリスク

 車体表示は収集運搬の処理基準の一部です。基準に適合しない収集運搬を行った場合、都道府県知事等から改善命令を受けることがあり(法第19条の3)、この命令に従わなければ3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象となります(法第26条第2号)。屋号だけの表示は、外から見てすぐに分かる不備ですので、指摘を受けやすいという点も意識しておきたいところです。

走り出す前に確認しておきたい3点

 まず氏名が許可証どおりに表示されているか、次に車体の両側面に表示されているか、そして許可番号の下6けたが正しいか。この3点を押さえておけば、大きな問題は起こりにくくなります。マグネットシートによる着脱式の表示も認められていますが、運搬中は必ず掲示されている状態を保つ必要があります。車体表示は小さなことのようでいて、事業者としての姿勢がそのまま表れる部分です。きちんと整えておくことが、日々の業務と事業を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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