
産業廃棄物処理業の許可は、一定の事由に該当すると取り消されることがあります。ただ、行政庁がある日突然、取消しの通知だけを送りつけてくるわけではありません。処分の前には原則として聴聞という手続が置かれ、事業者には自分の言い分を述べる機会が法律上保障されています。ここでは、その流れと実務上の注意点を整理します。
取消しは「聴聞」、事業停止は「弁明の機会の付与」
どちらの手続が行われるかは、行政手続法第13条第1項が定めています。許認可等を取り消す不利益処分をしようとするときは聴聞(同項第1号イ)、それ以外の不利益処分は弁明の機会の付与(同項第2号)です。環境省の「行政処分の指針について」(令和3年4月14日環循規発第2104141号)でも、許可を取り消すときは聴聞、事業の停止を命ずるときは弁明の機会の付与を行うこととされています。聴聞は口頭でのやり取りを含む、より手厚い手続という位置づけです。
ただし例外もあります。同じ指針は、欠格要件に該当したことを理由とする取消しについて、判決書や市町村の刑罰等調書といった客観的な資料で該当性を証明できる場合には、行政手続法第13条第2項第2号にあたるものとして聴聞を行う必要はないとしています。一方で、暴力団員該当性に関する警察本部長の意見などはこの「客観的な資料」に当たりにくく、聴聞が必要とされています。
聴聞の通知には何が書かれているか
行政庁は、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、書面で通知しなければなりません(行政手続法第15条第1項)。記載される事項は次のとおりです。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 聴聞の期日及び場所
四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
つまり、どの条文に基づき、どんな事実を理由に、いつ・どこで審理するのかが事前にすべて示されます。あわせて、期日に出頭して意見を述べ証拠書類等を提出できること、聴聞が終結する時までの間は資料の閲覧を求められることも教示されます(同条第2項)。この閲覧請求権は同法第18条第1項に定められており、行政庁は第三者の利益を害するおそれがあるなど正当な理由がなければ拒むことができません。事実関係に争いがあるなら、まずここから始めるのが実務的です。
期日に事業者ができること
期日には主宰者が置かれ、冒頭で行政庁の職員が処分の内容・根拠・原因となる事実を説明します。事業者は意見の陳述、証拠書類等の提出、主宰者の許可を得たうえでの職員への質問ができます(同法第20条)。代理人を選任することもでき(同法第16条)、出頭が難しい場合は陳述書と証拠書類等の提出で代えることも可能です(同法第21条)。審理は原則として公開されません。終結後は主宰者が調書と報告書を作成し、行政庁はその内容を十分に参酌して処分を決定します(同法第26条)。
通知後の「廃業届」は逆効果になります
処分を避けようとして、聴聞の通知を受けてから事業の全部の廃止を届け出るケースがあります。しかし廃棄物処理法は、聴聞の通知があった日から処分の日(または処分をしないことを決定した日)までの間に廃止の届出をした者は、届出の日から5年間欠格要件に該当すると定めています(法第14条第5項第2号イが引用する法第7条第5項第4号ヘ)。法人の場合は、通知の日前60日以内に役員等であった者も同様です(同号ト)。「当該事業の廃止について相当の理由がある者」は除かれますが、取消しを免れる目的の駆け込み廃業は通用しない仕組みです。
処分が出た後の争い方
聴聞手続の中で行われた処分(たとえば閲覧の不許可)については、審査請求をすることができません(行政手続法第27条)。一方、聴聞を経てなされた許可の取消処分そのものは、審査請求や取消訴訟で争う道が残されています。ただ、処分後の巻き返しは容易ではありません。主張と証拠を出すべき最大の機会は聴聞の期日そのものだと考えておくのが現実的です。
聴聞は、事業者を追い詰めるための形式的な儀式ではなく、行政庁の事実認定に誤りがないかを確かめる場でもあります。通知が届いたら、資料の閲覧請求や代理人の選任も含めて早めに動くことが、結果として事業を守ることにつながります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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