「これは有価物だから産業廃棄物の許可はいらない」。現場でよく交わされるやり取りですが、そこで話が終わってしまうケースが少なくありません。廃棄物処理法の適用がないことと、ほかの法律の規制も受けないことは、まったく別の話です。有価物として売買する場面では、古物営業法という別のルールが顔を出します。ここでは、産廃実務の視点から両者の線引きを整理します。

廃棄物処理法と古物営業法は目的が違う

 廃棄物処理法は、生活環境の保全と公衆衛生の向上を目的とする法律です。これに対して古物営業法第1条は、盗品等の売買の防止と速やかな発見を図り、窃盗その他の犯罪の防止に資することを目的として掲げています。守ろうとしているものが環境なのか、それとも犯罪抑止なのか。出発点がまったく違うため、片方の規制が外れても、もう片方は独立して判断されることになります。総合判断説にしたがって有価物と整理された物であっても、それは廃棄物処理法上の許可が不要になるという意味にすぎず、古物商許可の要否は改めて検討しなければなりません。

古物商許可が必要になる場面と、ならない場面

 古物営業法第2条第1項は「古物」を、一度使用された物品、使用されない物品で使用のために取引されたもの、またはこれらに幾分の手入れをしたものと定義しています。産廃の現場で言えば、中古の工作機械や工具、事務機器などがこれにあたります。そのうえで同条第2項第1号は、古物営業を「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」と定め、古物を売却することのみを行うものは除くとしています。ここが実務上の分かれ目です。自社の工場や現場から出た中古機械を売却するだけなら、古物商許可は必要ありません。一方で、他社から中古品を買い取って再販する形をとるなら、法第3条により営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可が要ります。申請窓口は警察署の生活安全課です。なお、施行令第2条により、鉄道車両や航空機、重量が5トンを超え自走もけん引もできない機械などは古物から除外されています。

金属スクラップは「古物」ではないが、別の届出がある

 警察庁の解釈運用基準では、金属くずを本来の用法に従って使用することが不可能になったものと整理しており、切断された銅線などは古物にあたりません。ただし規制がないわけではなく、令和8年6月1日に全面施行された盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)により、営業所ごとに特定金属くず買受業の届出が義務づけられました。特定金属として指定されているのは現時点では銅のみで、金属くず全体の重量または価格の2分の1以上を銅が占めるかどうかが基準です。なお製造工程で生じる端材は対象外とされています。施行日時点で営業していた事業者は令和8年8月31日までに届け出れば営業を継続できますが、相手方の本人確認と取引記録の作成・保存は猶予されず、保存期間は3年です。一部の道府県では条例が別に置かれている点も確認が必要です。

無許可・無届のリスクを踏まえて

 古物営業法第31条は、許可を受けずに古物営業を営んだ者に3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定めています。金属盗対策法の無届営業についても、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。産廃の許可を持っているからといって、これらが免除されることはありません。取り扱う物が「誰から」「どのような状態で」入ってくるのかを一件ごとに整理し、廃棄物なのか、古物なのか、金属くずなのかを見極めることが、結果として事業を守ることにつながります。

 ※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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