個人名義の車をそのまま法人で使いたいという場面

 法人で産業廃棄物収集運搬業の許可を取ろうとしたとき、「運搬に使う車が代表者個人の名義のままだった」という場面は珍しくありません。個人事業から法人成りしたケースや、役員が自分で購入したトラックをそのまま業務に使っているケースです。この車を会社に貸し付ける形で申請できるのか。実はこの取扱い、自治体によって結論が分かれます。同じ書類をそろえたつもりでも、A県では受理されB都では差し戻される、ということが現実に起きています。

法令が求めているのは「運搬施設を有すること」

 前提として、法令そのものは車両の名義を直接定めていません。廃棄物処理法第14条第5項第1号を受けた施行規則第10条第1号イは、産業廃棄物が飛散し、流出し、悪臭が漏れるおそれのない運搬車その他の運搬施設を「有すること」と定めているだけです。つまり求められているのは所有権ではなく、その車両を継続して使える使用権原があるかどうか。この「有する」をどこまで広く読むかが、自治体ごとの運用差を生んでいます。

貸付けを認める自治体の考え方

 貸付けを認める自治体では、車検証の使用者が申請者と異なっていても、賃貸借契約書や使用貸借契約書の写しを添付すれば登録できます。たとえば愛知県は、他人の車両を借用する場合に賃貸借契約書等の写しの添付を求めたうえで、名義貸しの内容とならないこと、使用権原に制約がなく1年以上の一定期間継続して使用できることを条件としています。代表者や役員からの貸付けも、この要件を満たせば認められる余地があります。無償の使用貸借であっても、期間と使用条件が書面で明確になっていることが前提です。「必要なときだけ借りる」といった内容では、継続して使用できるとは判断されません。

車検証の名義でしか判断しない自治体もある

 一方で、車検証の記載だけで判断する自治体もあります。東京都の手引では、運搬車両の使用権原は自動車検査証等の所有者欄または使用者欄で確認するとされ、認められるのは使用者欄が申請者である場合か、使用者欄が空欄で所有者欄が申請者である場合のみです。借受車両は登録できないと明記されているため、代表者個人の名義のままでは登録できません。この場合は車検証の使用者を法人へ変更する手続きが先になります。

契約書を整えるだけでは足りない

 気をつけたいのは、契約書さえ作れば何でも通るわけではないという点です。廃棄物処理法第14条の3の3は名義貸しを禁止しており、実際の運搬を車両の持ち主が自分の判断で行っているような実態があれば、書面が整っていても問題になります。許可を受けた法人が運転者を指揮し、費用と責任を負っていること。この実態が伴っているかどうかが本質です。

複数自治体で申請するなら名義変更が安全

 これから複数の自治体で許可を取る予定があるなら、いちばん厳しい自治体に合わせて車検証の使用者を法人名義にそろえておくのが安全です。名義変更は運輸支局での手続きで済み、費用も大きくはありません。後から車両を差し替える手間や、申請が止まるリスクを考えれば、先に整えておく価値は十分あります。

申請前に管轄の手引を確認しましょう

 運用は手引や審査基準の改訂で変わることもあります。申請前に管轄する都道府県・政令市の最新の手引を確認し、判断に迷う点は窓口へ問い合わせておく。その一手間が余計な差戻しを防ぎ、事業を守ることにつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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