
「決算書三期分」は要件そのものではありません
産業廃棄物収集運搬業の許可を取ろうとすると、必ず出てくるのが「直前三年分の決算書」という言葉です。設立したばかりの会社や、法人成りしたばかりの事業者の方から「三期そろっていないと申請できないのでしょうか」というご相談をよくいただきます。ただ、条文を丁寧に読むと少し景色が変わってきます。廃棄物処理法第十四条第五項第一号が求めているのは、施設と申請者の能力が環境省令で定める基準に適合していることです。その基準を定めた施行規則第十条第二号ロは「産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」と定めているだけです。三期分の決算書は、この経理的基礎を確かめるための添付書類であって、要件そのものではありません。
要件を満たせば許可は出される仕組みです
ここは押さえておきたい点です。環境省の許可事務通知(令和二年三月三十日付け)は、申請者が基準に適合する施設と能力を有し、欠格要件に該当しない場合には必ず許可をしなければならないものと解されており、都道府県知事に許可を与えるかどうかの裁量権を与えるものではないと明記しています。つまり、実績が三年分ないという一点だけで門前払いになる制度ではありません。決算書がそろわない分をほかの資料でどう補い、経理的基礎を示すかという話になります。
決算が何期あるかで用意する資料が変わります
実務では、決算を一期も迎えていないのか、一期か二期分はあるのかで準備するものが変わります。一期も終えていない場合は決算書そのものが存在しないため、開始貸借対照表や事情を説明する申立書、収支計画・資金計画をそろえる運用を示している自治体があります。一期か二期分がある場合は、法人なら貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表と法人税の納税証明書を、個人なら確定申告書の写しと所得税の納税証明書を出したうえで、不足分を計画書類で補うのが一般的です。借入があるときは、借入残高証明書と返済予定表を求められることもあります。
見られているのは「これから続けられるか」です
許可事務通知は、経理的基礎の判断について、利益が計上できていること、または自己資本比率が十パーセントを超えていること、そして申請に係る事業の将来の見通しについて適切な収益が見込まれることが望ましいとしています。利益の有無は原則として過去三年間程度の損益平均値で判断するとされていますが、これはあくまで原則です。実績が短い事業者はそもそも平均を取る材料がありませんから、事業計画や資金の調達方法が実際に成り立つのかという将来の見通しへ、判断の比重が移ることになります。
説明できる材料を早めに整えておきましょう
同じ通知では、経理的基礎を有さないと判断するにあたって、金融機関からの融資の状況を証明する書類や中小企業診断士の診断書などを必要に応じて提出させ、慎重に判断することとされています。裏を返せば、こうした資料は不利な材料ではなく、実績の不足を補う説明材料だということです。取り扱う品目、想定する取引先、車両の調達費用と当面の運転資金の見通しを、数字の根拠とあわせて整理しておきましょう。運用の細かな部分は自治体ごとに差がありますので、申請先の窓口へ早めに相談することをおすすめします。実績が浅いことは弱点ではなく、説明の準備をどれだけ整えられるかが、許可取得への近道になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。
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