決算書を開いて赤字の数字を見た瞬間、「この状態で産業廃棄物収集運搬業許可を申請しても通らないのではないか」と不安になる方は少なくありません。元請から許可の取得を求められているのに、直前期がマイナスで足踏みしてしまう——実務ではよくある場面です。結論から言えば、赤字決算だからといって申請できないわけではなく、許可を取得できる可能性は十分にあります。ただし、赤字の中身と決算内容の組み合わせによっては追加の書類を求められますので、審査で何が見られているのかを正しく理解しておくことが大切です。

許可要件としての「経理的基礎」とは何か

 産業廃棄物収集運搬業の許可要件は廃棄物処理法第14条第5項第1号に定められており、施設と申請者の能力が「その事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるもの」として環境省令の基準に適合することが求められます。この環境省令が施行規則第10条で、その第2号ロに「産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ、継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」と規定されています。注目したいのは、条文のどこにも「黒字であること」「債務超過でないこと」といった数値基準が書かれていない点です。つまり赤字そのものを不許可事由とする規定は存在せず、事業を継続できる財務的な体力があるかどうかが、決算書をもとに総合的に判断される仕組みになっています。

赤字=即不許可ではない――審査基準の実際

 愛知県の「経理的基礎に関する審査基準」を例にとると、法人について従前の基準で不許可とされていたのは、①直前3年の各事業年度における経常利益金額等の平均額がマイナス、②直前事業年度の経常利益金額等がマイナス、③直前事業年度において債務超過という三つの状態にいずれも該当する場合です。裏を返せば、赤字が一期だけであったり、債務超過に陥っていなかったりすれば、この枠には入りません。さらに実務で見落とされやすいのが、ここでいう経常利益金額等が「経常利益+減価償却費」で計算されるという点です。車両を多く保有する運搬業では減価償却費が大きくなりやすいため、損益計算書上は赤字でも、加算後の数字はプラスになるケースが珍しくありません。

赤字決算で申請するときに準備したい書類

 基本となるのは直前3期分の決算書(法人は貸借対照表・損益計算書、個人事業主は確定申告書と納税証明書)です。そのうえで審査基準に触れる場合には、中小企業診断士または公認会計士が作成する経営診断書の添付を求められます。この診断書は今後5年間の収支計画に基づいて作成されるもので、赤字の事実を説明するだけの書類ではなく、これから健全な経営に戻っていく道筋を数字で示すものです。したがって、受注の見込みや経費削減の計画、資金調達の状況を事前に整理しておくと作成がスムーズに進みます。説明できる赤字であれば、道は十分に開けます。

更新許可の特例と、都道府県ごとの違い

 注意しておきたいのが手続の種類による違いです。愛知県では新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、従前なら不許可となる財務状況でも、経営診断書により5年以内に健全な経営に戻ることを証明できれば経理的基礎ありと認める特例が設けられていますが、これは更新許可申請にのみ適用され、新規許可申請と変更許可申請には適用されません。また、自己資本比率や流動比率をどこまで見るか、何期分をどのように評価するかといった具体的な運用は都道府県・政令市ごとに異なりますので、申請先の手引きや窓口で最新の取扱いを確認することが欠かせません。

不安を抱えたまま申請せず、早めの確認を

 赤字決算での申請は、書類を揃えるだけでなく「財務状況をどう説明するか」が結果を左右します。不許可となった場合でも申請手数料や診断書の費用は戻りませんので、着手前に自社がどの区分に当てはまるのかを見極めておくことが重要です。行政書士に相談すれば、決算書から経営診断書が必要になるかどうかの事前判定を行い、必要な場合は中小企業診断士と連携しながら収支計画の組み立てまで一貫して進められます。数字に不安があるからこそ、早い段階で見通しを立てておくことが、結果として許可取得への近道になります。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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