産業廃棄物収集運搬業の許可を取ろうと調べ始めたとき、多くの事業者が最初に手を止めるのが講習会です。「講習を受けていないと、申請の準備すら始められないのではないか」。そう考えているうちに、取引先から求められた期日だけが近づいてくる。そうしたご相談は決して珍しくありません。実際のところ、講習の予約が数か月先になってしまったとしても、その期間はただ待つだけの時間ではありません。むしろ、受講を待っている間にこそ確認しておくべき事項が数多くあります。ここでは、講習をまだ受けていない段階の事業者が、申請までに何から着手すればよいのかを順番に整理します。

結論――修了証は必要。ただし「講習待ち」の期間にできる準備は多い

 結論から申し上げると、産業廃棄物収集運搬業許可の申請では講習会の修了証が必要書類のひとつとされており、これを回避する方法は基本的にありません。ただし、申請に必要なものは修了証だけではありません。どこの許可が必要か、取り扱う品目、運搬車両と運搬容器、直近の決算内容、欠格要件の確認、登記事項証明書などの各種証明書類。これらはいずれも受講の状況とは関係なく並行して進められる部分です。つまり、講習の日程が先になった場合の最短ルートは、修了証が届いた時点でそのまま申請できる状態を作っておくことに尽きます。逆に、講習が終わってから書類の準備を始めると、そこからさらに一か月以上を要することも珍しくありません。

そもそも許可が必要なのはどんな場合か

 準備に入る前に、一度立ち止まって確認しておきたいのがそもそも許可が必要な運搬なのかという点です。許可が必要になるのは、他人から排出された産業廃棄物を、業として収集・運搬する場合です。自社の事業活動で生じた廃棄物を自社の車両で自ら運ぶ、いわゆる自社運搬であれば、原則として収集運搬業の許可は不要とされています。ただし、自社運搬であっても運搬基準の遵守や車両への表示・書面の携行は必要ですし、グループ会社間の運搬や、元請・下請の関係によっては「他人の廃棄物」に当たると判断される場面もあります。建設工事では元請業者が排出事業者となるのが原則で、下請業者が廃棄物を運ぶ場合は許可が必要になるのが基本形です。自社の運搬形態がどれに当たるのかを、最初に整理しておいてください。

講習会はどのような制度なのか

 産業廃棄物処理業の許可申請にあたっては、事業を的確に行うための知識と技能を有していることを確認する趣旨から、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する講習会の修了が求められます。収集運搬業で必要になるのは「産廃の収集・運搬課程」で、新規許可用の課程は受講時間が約12時間(対面形式では2日間)、最後に修了試験が課されます。2026年度の受講料はオンライン形式で27,500円、対面形式で33,000円(いずれも税込)です。なお、オンライン形式は講義動画を自分のペースで視聴できる一方、修了試験は申込時に指定した会場へ出向いて受験する必要があり、自宅では受けられません。この点を勘違いしていると、日程の組み方を誤ることになります。

 もうひとつ押さえておきたいのが、修了証の有効期限です。廃棄物処理法そのものに修了証の有効期限を定めた規定はなく、許可申請の際にどこまで古い修了証を認めるかは、各自治体が「有効期間」として定めているのが実情です。愛知県の場合、修了証の有効期間は新規・更新とも5年とされています。更新講習会の修了証については、かつて2年という扱いでしたが、平成25年4月1日から5年に変更されました。自治体によっては更新についてこれより短い年数を定めている場合もあります。以前に受講した記憶がある方は、まず修了証の交付日を確認してください。手元にあっても、申請先の運用によっては使えないことがあります。

予約が取れないときの考え方

 講習会は会場ごとに開催回数が限られており、年度当初に人気の日程から埋まっていく傾向があります。「許可が必要になったのですぐ受講したい」と考えても、希望どおりの日程で受けられるとは限りません。このとき有効なのが、近隣他県の会場を含めて空席を探すという方法です。修了証は全国共通のものですので、どの会場で受講しても各都道府県への申請に使用できます。また、キャンセルによって空席が出ることもあるため、申込サイトの空席状況をこまめに確認する価値はあります。取引先から時期を求められている場合は、まず受講できる最短の日程を押さえ、そこから逆算してスケジュールを組み立ててください。講習の日程が、許可取得の全体スケジュールを事実上決定します。

誰が受講するのか-最初に決めておくべきこと

 講習は「会社」ではなく「人」が受講するものです。愛知県の場合、法人であれば代表者もしくは業務を行う役員、または業を行おうとする区域にある事業場の代表者が受講することとされており、個人であれば申請者本人または当該事業場の代表者となります。肩書きのない現場担当者に受講させたものの、申請時に求められる立場と一致せず受講し直しになるという事態は、費用と時間の両面で避けなければなりません。また、修了証は個人に対して交付されるため、受講者が退職した場合には、その修了証を会社の申請に使い続けられるかという問題が生じます。役員の交代や退職が見込まれる場合は、誰の名前で修了証を取得するかを申込前に確定させておくことが重要です。

どこの許可が必要か-積込みと荷卸しで決まります

 産業廃棄物収集運搬業の許可は、会社の所在地ではなく廃棄物を積み込む場所と荷を卸す場所を基準に、必要な許可先を判断します。積込みも荷卸しも愛知県内であれば愛知県知事の許可、積込みが愛知県内で荷卸しが岐阜県内であれば愛知県と岐阜県の両方の許可が必要です。単に通過するだけの都道府県については許可は要りません。また、積替え保管を行わない収集運搬であれば、平成23年4月の制度改正により許可権者は都道府県知事に一本化されており、県内の市ごとに別途許可を取る必要はありません。名古屋市(政令指定都市)や豊橋市・岡崎市・一宮市・豊田市(中核市)の許可が別途必要になるのは、その市内に積替え保管の場所を設ける場合などに限られます。

品目・車両・運搬容器の確認

 次に整理すべきは、実際に運搬する産業廃棄物の品目です。がれき類、廃プラスチック類、金属くず、木くず、汚泥といった区分のうち、自社が本当に扱うものを具体的に選定します。「とりあえず全部」という申請は現実的ではなく、石綿含有産業廃棄物や水銀使用製品産業廃棄物を含める場合には、取扱いや積載方法について追加の説明を求められることがあります。車両については自動車検査証記録事項(電子化に伴う車検証の現行名称)の写しと車両写真が必要で、撮影の角度や枚数は自治体ごとに指定があります。リース車両や他社名義の車両を使用する場合は使用権原を示す資料が必要です。あわせて、飛散・流出・悪臭が漏れない運搬容器を品目に応じて準備しておきます。

経理的基礎と欠格要件-早めの確認が効きます

 許可の審査では、事業を継続的に行える経理的基礎があるかどうかが確認されます。直近の決算が赤字や債務超過となっている場合には、中小企業診断士や公認会計士が作成した財務内容を補足する書類の提出を求められることがあり、この作成には日数と費用がかかります。決算内容に不安がある場合ほど、講習を待っている間に見通しを立てておく意味は大きいといえます。もうひとつが欠格要件です。役員や一定の株主等について、拘禁刑以上の刑に処せられ執行を終えてから5年を経過していない場合のほか、廃棄物処理法をはじめとする環境関係法令や刑法の一定の罪による罰金刑も対象となります。該当すると許可を受けられないため、最初の段階で確認しておくべき事項です。

必要書類と、取り寄せる順番

 一般的に必要となるのは、許可申請書一式、講習会修了証の写し、事業計画の概要、運搬車両・運搬容器の写真、定款の写しと履歴事項全部証明書、直近の決算書、納税証明書、役員等の住民票および登記されていないことの証明書、事務所や駐車場に関する資料などです。ここで注意したいのが、証明書類には発行から3か月以内といった期限が設けられていることが多い点です。講習より先に取り寄せすぎると、申請時に取り直しとなり、費用も手間も二重にかかります。取得のタイミングにも順番があると考えてください。なお、愛知県の新規許可申請の手数料は81,000円、標準処理期間は39日(土日祝を除く)とされており、申請してすぐ許可が下りるわけではない点も、スケジュールに織り込んでおく必要があります。

自治体によって異なる部分

 産業廃棄物収集運搬業許可は法令に基づく全国共通の制度ですが、運用面では自治体ごとに違いがあります。申請書の様式や部数、車両写真の撮影方法(角度、社名表示の有無など)、事前予約制か窓口持参か郵送可か、標準処理期間、経理的基礎の判断における追加資料の取扱い、電子申請の可否。いずれも各自治体の手引きで確認すべき事項です。そのため、他県で許可を取得した経験があっても、まったく同じ手順で進むとは限りません。複数県での申請を検討している場合は、それぞれの手引きを取り寄せたうえで、共通して使える書類と自治体ごとに作り分ける書類を仕分けておくと、申請の直前に慌てずに済みます。

講習について実務でよくいただく質問

 まず更新のときにも講習が必要かという点ですが、更新許可申請では更新用の課程の修了証が求められるのが原則で、新規のときの修了証をそのまま使えるとは限りません。更新は有効期間の満了前に手続きを終える必要があるため、満了日から逆算して受講時期を計画してください。次に修了証を紛失した場合ですが、JWセンターに再交付の取扱いがあります。手数料と日数がかかりますので、紛失に気づいた時点で早めに手続きすることが重要です。申請直前に発覚すると、そのままスケジュール全体が後ろにずれます。なお、優良認定を受けた事業者は許可の有効期間が7年となる制度もあり、更新の周期そのものが変わる場合があります。

講習前でも、準備の相談はできます

 講習の受講そのものは事業者ご本人が行う必要がありますが、その前後の準備は行政書士に依頼することができます。積込・荷卸しの場所から必要な申請先を整理する、扱う品目と車両・容器を申請できる形に整える、決算内容から追加資料の要否を見立てる、証明書類の取得順序と時期を調整する、自治体ごとの様式や運用の違いに対応する。こうした作業を講習と並行して進めておけば、修了証が届いた週に申請できる状態を作ることも十分に可能です。「講習をまだ受けていないので相談できない」ということはありません。むしろ受講前の段階こそ、確認しておくべき事項が多いタイミングです。行政書士吉田哲朗事務所では、講習の日程が先になっている段階からのご相談もお受けしています。

【講習前の準備・申請スケジュールについて相談する】

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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