産業廃棄物の処理を外部に委託する際、委託先が無許可業者であった場合、排出事業者もまた法的責任を問われる可能性があります。「委託したのだから処理業者の問題だ」という認識は法令上通用しません。ここでは、無許可業者への委託が生じさせる責任の内容を整理します。

排出事業者責任の原則

 廃棄物処理法第12条第5項は、事業者が産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託する場合、その運搬については産業廃棄物収集運搬業者に、その処分については産業廃棄物処分業者に、それぞれ委託しなければならないと定めています。

 産業廃棄物収集運搬業・処分業を営むためには、都道府県知事(または政令市長)の許可が必要です(法第14条)。許可を持たない業者は、他人の産業廃棄物を収集・運搬・処分することができません。

委託基準違反と刑事罰

 法第12条第5項が「誰に委託すべきか」を定めているのに対し、第6項は「政令で定める基準(委託基準)に従わなければならない」と規定しており、その具体的な内容は廃棄物処理法施行令第6条の2に定められています。同条第1号は、委託先が「許可を受けた業者であること」を委託基準の一つとして明示しています。

 無許可業者への委託は、この委託基準(法第12条第6項・施行令第6条の2第1号)への違反に該当します。罰則は法第26条第1号に定められており、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科するとされています。また、両罰規定(法第32条)の適用により、法人については代表者個人だけでなく法人自体も処罰対象となります。担当者個人が違反行為を行った場合も、会社が違反防止のための必要な措置を怠っていたと判断されれば、法人にも罰則が科せられる可能性があります。

行政上の責任:措置命令

 刑事罰に加え、行政上の責任として措置命令が問題となります。

 法第19条の5は、産業廃棄物の不法投棄等が行われ、生活環境の保全上支障が生じ、またはそのおそれがあると認められるとき、都道府県知事等が必要な措置を命ずることができる旨を定めています。この措置命令の対象には、処理業者だけでなく、排出事業者も含まれることがあります。

 さらに、法第19条の6は、第19条の5の措置命令の対象となった業者に資力等がなく支障の除去が困難な場合において、排出事業者が適正な処理料金を負担していなかったとき、または不適正な処分が行われることを知っていたもしくは知ることができたときは、委託契約や管理票の取扱いが適正な排出事業者であっても、措置命令の対象となり得ると定めています。措置命令に違反した場合には、法第25条第1項第5号により、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金が科されます。

「知らなかった」は免責されない

 実務上、「許可の有無を確認していなかった」「業者を信用した」という事情は、法律上の免責事由にはなりません。排出事業者には、委託先の許可証を確認し、書面による契約を締結し、マニフェストを適切に交付・管理する義務があります。なお、法第12条第7項は、処理状況の確認と適正処理のために必要な措置を講ずる努力義務も排出事業者に課しています。

 コスト削減を目的として処理費用の相場を大きく下回る業者を選ぶことは、無許可業者に委託するリスクを高めます。委託前に許可証の内容を確認すること、処理の品目と許可の範囲が一致しているかを精査することが、排出事業者としての基本的な責務です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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