産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するには、申請者が「的確かつ継続して事業を行うに足りる経理的基礎を有すること」が許可要件の一つとなっている。この経理的基礎の確認において、法人と個人事業主では提出書類の構造が異なる。そして個人事業主の中でも、確定申告の方式によって、申請準備の手間に無視できない差が生じることがある。

白色申告と青色申告──何が違うのか

 確定申告には白色申告と青色申告の二種類がある。青色申告のうち65万円(または55万円)の特別控除を受ける場合は、複式簿記による記帳と、貸借対照表の作成・申告書への添付が義務付けられている。貸借対照表には、事業者が保有する資産・負債・純資産の状況が一覧で示されるため、財産状況を第三者に説明しやすい書類となっている。

 一方、白色申告は収入と必要経費の差引きによって所得を計算する方式で、複式簿記や貸借対照表の作成義務がない。損益の概要は収支内訳書で把握できるが、事業者がどのような資産を保有し、どの程度の負債を抱えているかは、申告書面からは読み取ることができない。

個人申請者に求められる「資産に関する調書」

 廃棄物処理法施行規則は、産業廃棄物収集運搬業の許可申請における添付書類として、申請者が個人である場合に「資産に関する調書」と、直前3年の所得税の納付すべき額および納付済額を証する書類の提出を求めている。法人申請の場合が直前3年の貸借対照表・損益計算書等を一体で提出することで財産状況を示せるのに対し、個人申請では所得税関係書類と合わせて、この調書を別途作成しなければならない。

 「資産に関する調書」とは、現金・預貯金・不動産・車両・機械設備などの資産と、借入金等の負債の状況を一覧にまとめた書類である。特定の様式が法令上定められているわけではなく、行政庁が定める書式や参考様式に沿って作成するのが一般的だが、いずれにせよ日常の帳簿管理から自動的に生成される書類ではない点が重要である。

白色申告者に生じる準備の手間

 青色申告(65万円控除)を選択している個人事業主は、複式簿記による記帳の中で資産・負債の状況を日常的に把握しており、決算時に貸借対照表が完成する。許可申請にあたって資産調書を作成する際も、この貸借対照表を基礎データとして活用しやすい。

 これに対し、白色申告の事業者は日常的に資産管理の帳簿を整備していないことが多い。申請時になって初めて、預貯金残高の確認・固定資産(車両・機械等)の種類と価額の整理・不動産の状況の把握・借入金残高の確認といった作業をゼロから行う必要が生じる。これらの情報は複数の機関に問い合わせて収集するものも含まれており、書類準備にかかる時間と手間が増える要因となっている。

日常の資産管理が申請準備を左右する

 産廃収集運搬業の許可取得を将来的に見据えているのであれば、確定申告の方式や日常の帳簿管理のあり方が、申請準備のコストに直結することを意識しておく価値がある。資産状況を日頃から整理しておく習慣は、許可申請時の書類作成をスムーズにするだけでなく、経営状態を継続的に把握するという意味でも有益である。白色申告を選択していること自体が許可の障壁になるわけではないが、準備の負担という観点では無視できない違いがある。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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