産業廃棄物の不法投棄や不適正処理が行われた場合、都道府県知事等は廃棄物処理法第19条の5に基づき、行為者等に対して措置命令を発することがあります。

このとき問題となるのが、措置命令に従って行う「現状回復」の範囲がどこまで及ぶのかという点です。

結論からいえば、命じられるのは単なる形式的な違反是正ではなく、生活環境保全上の支障を除去するために必要な限度の措置です。


1.措置命令の目的は「生活環境の保全」

措置命令の本質は、違反行為そのものを処罰することではなく、生活環境への支障を除去し、またはその拡大を防止することにあります。

そのため、「違反前の状態に完全に戻すこと」が常に求められるわけではありません。

あくまで、支障の原因となっている状態を解消し、周辺環境への悪影響を防止するために合理的に必要と認められる範囲で命令が出されます。


2.現状回復に含まれ得る措置

実務上、次のような措置が命じられることがあります。

・投棄された廃棄物の撤去
・飛散・流出防止措置
・遮水措置や囲い込み
・汚染が確認された土壌の掘削や入替

ただし、これらが必ず一律に命じられるわけではありません。

例えば、廃棄物を撤去することで生活環境上の支障が解消される場合には、それ以上の措置が求められないこともあります。

一方で、有害物質の浸出や地下水への影響が確認されている場合には、より広範な対策が必要と判断される可能性があります。

重要なのは、「どこまでが必要か」は個別具体的に判断されるという点です。


3.判断基準となる要素

措置命令の範囲を検討する際には、次の事情が総合的に考慮されます。

・廃棄物の種類や性状
・投棄量や処理量
・周辺住民への影響
・生活環境への支障の有無および程度
・違反行為と環境影響との因果関係

行政庁は、これらを踏まえ、必要かつ合理的な範囲で措置内容を定めます。

過度に広範な措置が当然に命じられるわけではありませんが、放置すれば被害が拡大するおそれがある場合には、相応に広い対応が求められることもあります。


4.命令に従わない場合

措置命令に従わない場合、一定の要件を満たせば行政代執行が行われることがあります。

その場合、実際に要した費用が徴収される可能性もあります。

したがって、違反が疑われる段階から、

・事実関係の整理
・原因行為の範囲の特定
・環境影響の調査

といった対応を行うことが重要です。

初動対応の遅れが、結果として負担拡大につながることもあります。


5.まとめ

措置命令における現状回復の範囲は、違反前の状態へ機械的に戻すことではなく、生活環境保全上の支障を除去するために必要な限度で決まります。

廃棄物の撤去のみで足りる場合もあれば、土壌や地下水への対策まで及ぶ場合もあります。

いずれにしても、命令内容は個別事情によって判断されるため、早期に状況を把握し、適切に対応することが極めて重要です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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