産業廃棄物の不法投棄は、周辺の土壌・地下水・大気を汚染し、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす行為です。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は第16条で「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定め、その違反に厳しい罰則を設けています。しかし、法整備や監視体制の強化が進む現在もなお、不法投棄が完全に根絶されているわけではありません。本記事では、環境省が公表した最新の統計と法令上の規定を整理します。

令和5年度の最新統計

環境省は毎年度、全国の都道府県および政令市の協力を得て、産業廃棄物の不法投棄等の状況を調査・公表しています。令和6年12月に公表された令和5年度の調査結果によると、新たに判明した不法投棄事案は100件・総量4.2万トンにのぼりました。

前年度(134件・4.9万トン)と比べると件数・量ともに減少しており、平成10年代前半のピーク時と比較すれば大幅な改善が見られます。とはいえ環境省自身が「いまだ跡を絶たない状況にある」と表現しているとおり、毎年度、相当量の産業廃棄物が不法に投棄されているのが実態です。

なお、不適正処理(処理基準に反した処分等)については121件・5.0万トンが新たに判明しており、前年度より件数・量ともに増加しています。不法投棄と不適正処理を合わせると、引き続き広範な問題が続いていることがわかります。

誰が、何を投棄しているのか

令和5年度の実行者として件数が最も多かったのは排出事業者で44件(44%)でした。委託を経ずに自ら投棄するケースが依然として多いことがわかります。廃棄物の種類ではがれき類が最多(32件・32%、投棄量2.0万トン・47%)となっており、建設系廃棄物の適正管理が引き続き重要な課題であることを示しています。

廃棄物処理法における禁止規定と罰則

廃棄物処理法第16条は投棄の禁止を定め、同法第25条第1項第14号はその違反に対して以下の罰則を規定しています。

第25条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(第14号)第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者

同法第32条の両罰規定により、法人には行為者個人とは別に3億円以下の罰金が科される場合があります。また同法第25条第2項は不法投棄の未遂罪を処罰の対象としており、投棄が完了していない段階でも刑事責任を問われる可能性があります。

残存事案という長期的課題

令和5年度末時点における不法投棄等の残存事案は2,876件・残存量1,011万トン超と報告されています。過去に行われた投棄が撤去されないまま、生活環境への支障のおそれが残り続けているケースが多数あります。環境省は都道府県等と連携し、早期発見・早期対応による未然防止と拡大防止に取り組んでいます。

適正処理の実践が不法投棄の防止につながる

産業廃棄物の不法投棄は、環境汚染・健康被害のみならず、許可の取消しや刑事罰、社会的信用の失墜など事業者にとっても計り知れない損失をもたらします。排出事業者は委託先の許可状況・処理能力の確認、マニフェストの適正交付・確認を徹底することが求められます。適正な委託先の選定と継続的な管理こそが、不法投棄の連鎖を断つ第一歩となります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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