産業廃棄物に関わる事業者であれば、一度は目にする「廃棄物処理法」。正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)といいます。この法律はどのような時代背景から生まれ、何を目的としているのでしょうか。制定に至る経緯をたどりながら、法の目的を読み解いていきます。

前身である「清掃法」の時代

廃棄物処理法が制定される以前、日本の廃棄物処理は「清掃法」(昭和29年法律第72号)に基づいて行われていました。清掃法は、市街地における汚物の衛生的な処理と生活環境の清潔保持により、公衆衛生の向上を図ることを主な目的とした法律でした。

しかし、清掃法が対象としていたのは主に「ごみ」「燃えがら」「汚でい」「ふん尿」などの汚物であり、現在でいう産業廃棄物は「多量の汚物」や「特殊の汚物」として、個別に処分を命じることができる程度の規定にとどまっていました。体系的な処理の仕組みは存在していなかったのです。

高度経済成長と公害問題の深刻化

昭和30年代以降、日本は高度経済成長期を迎え、産業活動が飛躍的に拡大しました。それに伴い、工場から排出される廃棄物は量・種類ともに急増し、自然の浄化能力では処理しきれないほどの有害物質が環境中に放出されるようになります。

水俣病やイタイイタイ病、四日市ぜんそくなど、深刻な公害問題が各地で発生し、国民の健康と生活環境に対する脅威は社会問題へと発展しました。もはや市街地の衛生管理を中心とした清掃法だけでは、こうした課題に対応することは困難な状況だったのです。

「公害国会」と廃棄物処理法の誕生

こうした背景を受け、昭和42年には公害対策基本法が制定され、環境行政の基盤整備が進められていきます。そして昭和45年、第64回臨時国会 ―いわゆる「公害国会」― において、大気汚染防止法の改正など14の公害関連法令とともに、廃棄物処理法が成立しました。

廃棄物処理法は清掃法を全面的に改正する形で制定され、大きく次の三つの柱が据えられました。一つ目は事業者の処理責任を明確にしたこと、二つ目は産業廃棄物の処理体系を新たに確立したこと、三つ目は生活環境の保全と公衆衛生の向上を法の目的として明示したことです。

第1条が示す法の目的

廃棄物処理法第1条には、次のとおり法の目的が規定されています。

この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

この条文に掲げられた「生活環境の保全」と「公衆衛生の向上」という目的は、公害による被害を二度と繰り返さないという社会的な要請を背景に定められたものといえます。そしてその実現のために、廃棄物の排出抑制、適正処理、生活環境の清潔保持という三つの手段が示されています。

制定から50年以上を経て

廃棄物処理法は制定以来、不法投棄対策の強化やマニフェスト制度の導入、電子マニフェストの義務化など、社会の変化に合わせて繰り返し改正されてきました。しかし、第1条に掲げられた法の根本的な目的は制定時から一貫しています。

産業廃棄物の収集運搬に携わる事業者にとっても、許可制度や処理基準はすべてこの第1条の目的から導かれたものです。日々の業務が法の目的にどう結びついているかを意識することは、適正な事業運営を支える大切な視点です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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