1 廃棄物処理法と代執行制度

廃棄物処理法では、不法投棄や不適正処理に対して、原則として排出者責任や処理業者責任に基づき、当事者自らが適正に処理することを求めています。しかし、責任者が不明であったり、命令に従わず処理を行わない場合には、放置すれば環境や生活環境に重大な被害を及ぼすおそれがあります。
このような場合に活用されるのが行政代執行制度です。これは行政が責任者に代わって廃棄物を処理し、その費用を後日請求する仕組みです。

2 代執行が行われる典型的なケース

代執行の対象となるのは、主に以下のようなケースです。

  • 山間部や空き地に大量の廃棄物が不法投棄された場合
  • 産業廃棄物処理業者が倒産し、保管中の廃棄物が残されたまま放置されている場合
  • 行政からの改善命令や措置命令に従わない事業者がいる場合

これらは周辺環境や地域住民にとって深刻なリスクとなるため、迅速な対応が求められます。

3 代執行の手続き

代執行は、行政手続法や行政代執行法の規定に基づき進められます。手続きの流れはおおむね以下のとおりです。

  1. 行政庁が廃棄物処理法に基づく措置命令を発出
  2. 命令に従わない場合、行政代執行を行う旨を予告
  3. 代執行令書を発し、実際の処理を実施
  4. 行政が廃棄物処理業者に委託して撤去・処理を行う
  5. 費用を原因者へ請求(回収不能となるケースも多い)

このように、代執行は通常の行政処分よりも一段厳しい対応であり、適正な手続きを踏むことが不可欠です。

4 費用負担と回収の課題

代執行で大きな問題となるのが費用の回収です。投棄者が所在不明、あるいは倒産している場合、行政が肩代わりした処理費用がそのまま公費負担になることがあります。大量の廃棄物処理には数億円単位の費用がかかるケースも珍しくなく、自治体の財政を圧迫する要因となります。

このため、発生抑止の観点からも、排出者責任の徹底や許可業者への監督強化が重要視されています。

5 まとめ

廃棄物の代執行は、環境保全と生活環境維持の最後の砦として機能する制度です。
ただし、実際に発動されると多額の公費が投じられ、地域社会にとって大きな負担となるのも事実です。

したがって、事業者・排出者は日常的に法令遵守を徹底し、行政も不法投棄防止や許可業者の監督を強化することが求められます。代執行は「最終手段」であることを理解し、その前段階での適切な対応が社会全体にとっての重要な課題といえるでしょう。

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