製品が使用されたあとの「廃棄物問題」が深刻化する中で、注目されているのが「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」という考え方です。これは、生産者が製品の設計・製造段階だけでなく、「廃棄」まで責任を持つべきだという制度的な枠組みです。

■ 拡大生産者責任の基本的な考え方

拡大生産者責任(EPR)とは、製品のライフサイクル全体にわたって、製造者や輸入業者がその処理責任を負うという考え方です。具体的には、使用済製品の「回収・再資源化・適正処理」などの費用や体制整備を、行政ではなく事業者が主体となって担うよう制度化されます。

■ 日本における導入事例

日本では以下のような分野でEPRが法制化されています:

  • 家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)
    テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどを対象とし、メーカーが再資源化を義務付けられています。
  • 自動車リサイクル法
    使用済自動車から出るエアバッグ類、フロン類、シュレッダーダストの処理を自動車メーカーが担います。
  • 容器包装リサイクル法
    プラスチックや紙製の容器包装に関して、事業者が再商品化義務を負います。

■ なぜ今、EPRが重要なのか?

近年の脱炭素・循環型社会の流れを受けて、環境負荷の低減が国際的な潮流となっています。とくにプラスチックごみ問題や海洋汚染などは、製品の「最終処分」にまで目を向けざるを得ない社会課題です。
EPRは、そうした問題に対し、製造段階での資源選定やリサイクル設計を促す仕組みとして、ますます重視されています。

■ 企業・自治体・行政書士に求められる視点

行政書士としても、許認可支援や事業計画の策定において、EPRの視点を取り入れることが今後の差別化ポイントとなります。特に以下のような場面では、実務上の助言が求められます:

  • 廃棄物処理計画・中間処理業者との契約アドバイス
  • 環境配慮設計における助成金・補助金の活用
  • リサイクル法対応に伴う社内体制整備

✅ まとめ

拡大生産者責任は、企業活動と環境問題をつなぐ「橋渡し」の役割を果たす制度です。単なる処理コストの負担というよりも、「持続可能な経営」の一環として捉えることが重要です。
これからの事業運営では、**“作った責任”を“最後まで果たす”**という視点が求められてきます。

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