~水銀排出への新たな対応~

2024年4月、改正大気汚染防止法が施行され、廃棄物の焼却に伴って大気中へ排出される水銀について、新たな規制が適用されました。この改正により、一般廃棄物および産業廃棄物を取り扱う事業者は、従来以上に大気排出への対応が求められるようになっています。

1. 改正大気汚染防止法の概要

今回の改正では、特に水銀を含む排ガスへの規制が焦点となっています。水銀は人体や環境に対する影響が大きく、長期的に蓄積されることで健康被害を引き起こす可能性がある有害物質です。

このため、廃棄物焼却施設においては、焼却時に排出される水銀の量を低減するための技術的措置や、排出量の把握・報告が義務付けられました。対象となるのは、一般廃棄物焼却施設、産業廃棄物焼却施設を含む多くの焼却設備です。

2. なぜ水銀が問題なのか?

水銀は自然界に広く存在していますが、人為的な活動、特に廃棄物の焼却により、より高濃度で大気中に放出されることがあります。大気中に放出された水銀は雨などにより土壌や水系に移動し、最終的には食物連鎖を通じて人体に蓄積されます。

特に魚介類に蓄積されたメチル水銀は、摂取による健康リスクが高いため、国際的にも水銀排出に対する規制強化が進められており、日本もこの流れに沿って対応を強化しているのです。

3. 対象となる焼却施設の対応義務

今回の法改正により、焼却施設を保有・運営する事業者には以下のような対応が求められます。

  • 水銀排出抑制措置の実施:排ガス処理装置の導入や改修
  • 定期的なモニタリング:水銀濃度の測定と記録
  • 行政への報告義務:所定の書式で年1回以上の報告が必要

また、施設の新設や大規模な改修を行う場合は、水銀排出抑制に関する設計や性能が法基準を満たしているかどうか、事前に審査されることになります。

4. 廃棄物処理業者への影響

とりわけ産業廃棄物を取り扱う事業者にとっては、焼却設備の更新や排ガス処理装置の導入にかかるコスト負担が増える可能性があります。一方で、適切な対応を行うことで、地域住民や行政からの信頼を得ることができ、持続可能な経営にもつながるでしょう。

近年では、焼却以外の処理方法(リサイクルや中間処理)へのシフトも進んでおり、事業者は自社の方針を見直す契機にもなりそうです。

まとめ

大気中への水銀排出は、環境保全や人の健康に対する影響が非常に大きいため、法的な規制強化は今後さらに進んでいくと考えられます。一般廃棄物・産業廃棄物を焼却処理しているすべての事業者は、改正内容を正しく理解し、早期の対応が求められています。

制度変更を単なる「コスト増」と捉えるのではなく、「信頼性向上」や「持続可能性強化」のチャンスと捉えることが、今後の産廃業界で生き残るための重要なポイントとなるでしょう。

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吉田哲朗
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