産業廃棄物の収集運搬業を始めるには、都道府県知事の許可が必要です。しかし、いざ許可を取得しようとすると、その手続きの煩雑さや要件の厳しさに戸惑う方も多いのが実情です。今回は、その「なぜ難しいのか?」という理由を整理してご紹介します。


【1. 許可要件が多岐にわたる】

産廃収集運搬業の許可を取得するには、主に以下のような要件をクリアする必要があります。

  • 事業計画の明確性
  • 使用車両や運搬容器の確保
  • 欠格事由に該当しないこと
  • 経理的基礎の確認(3年分の決算書)
  • 事務所の使用権限の証明 など

一つでも不備があると、申請は受理されなかったり、補正の連絡が何度も入ることになります。特に、新規事業者にとっては、必要書類を一から揃えることが負担となりがちです。


【2. 経理的基礎の審査が厳格】

「経理的基礎」とは、廃棄物収集運搬という業務を安定して継続できるだけの資金力や収支管理体制があるかどうかを審査するものです。そのため、3年分の決算書(法人の場合)や、事業開始後間もない場合は経営診断書の提出が求められます。

この部分で多いのが、「債務超過である」といった理由による許可不可になる可能性もあります。数字に説得力がなければ、いくら事業の意欲があっても許可は下りません。


【3. 車両・設備の準備と書類の整合性】

許可を得るには、産業廃棄物を適切に運ぶための車両を所有または使用権限を持っていることを証明する必要があります。加えて、その車両に関する「車検証」「レンタル契約書」「写真」などの添付資料も求められます。

現場で使用する予定の車両が複数ある場合、それぞれについて資料を整備しなければならず、「書類と実態が一致していない」と判断されれば差し戻しになる可能性もあります。


【4. 法令遵守と講習修了の義務】

事業者自身が、廃棄物処理法や関連法令に違反していないことは大前提です。また、申請にあたっては「産業廃棄物収集運搬業に関する講習会」を修了し、その修了証を提出することが求められます。

この講習は全国の会場で定期的に実施されていますが、申込み枠が埋まっていることもあり、計画的に受講しなければ許可申請が遅れてしまうこともあります。


【5. 行政とのやり取りの難しさ】

提出書類をすべて揃えたとしても、実際には「補正依頼」や「追加資料提出の指示」があることが一般的です。自治体によって審査基準や運用方針が微妙に異なるため、何度も窓口へ足を運んで調整する必要があります。

申請者自身で対応する場合、制度に関する専門的な知識が求められ、時間と手間がかかる点もハードルとなります。


【まとめ】

産業廃棄物収集運搬業の許可取得が難しい理由は、単に「書類が多い」だけではありません。事業の実態、法令順守の姿勢、資金力、設備体制など、多角的な審査が行われるからこそ、慎重な準備と計画が不可欠です。

許可取得を目指す方は、まず自社の現状を客観的に見つめ、何が足りないのかを早期に把握することが重要です。

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吉田哲朗
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