
産業廃棄物収集運搬業の許可申請は、各都道府県の知事が審査・許可を行う仕組みになっています。ところが、実際の申請手続きを進めていく中で「県によって求められる内容が違う」と戸惑うケースが少なくありません。
この記事では、なぜ都道府県ごとに審査内容に差があるのか、その背景や注意点について解説します。
1.法律は全国共通、でも運用は都道府県ごと
産業廃棄物処理業の許可制度は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)」という全国共通の法律に基づいています。しかし、実際の許可審査を行うのは都道府県(または政令市)であり、それぞれが独自に運用マニュアルを定めているのが現実です。
たとえば、同じ「経理的基礎の証明」でも、A県では3期分の決算書と納税証明書で足りるのに対し、B県ではそれに加えて資金計画書や役員報酬明細まで求められることがあります。
2.地域事情や過去の行政指導の影響
運用の違いが生まれる背景には、それぞれの地域の事情や過去の行政指導があります。たとえば、ある県では廃棄物の不適正処理が問題になった経緯がある場合、それ以降は特に「業務管理体制」の確認が厳しくなった、というケースがあります。
また、過去の不正事例を踏まえて、特定の書類や管理体制の強化を独自に求める運用が導入されている自治体もあります。
3.申請者の対応次第で要求される内容が増えることも
提出書類が不十分、あるいは説明が不明瞭な場合には、都道府県から追加資料の提出を求められることもあります。このため、同じ内容の申請であっても、申請者の理解度や対応姿勢によって“求められる水準”に差が出ることがあります。
4.許可の「名義貸し」や不正防止の観点
全国的に問題視されているのが、収集運搬業許可の「名義貸し」などの不正利用です。これを未然に防ぐため、許可基準を厳格に適用している自治体もあります。
とくに、新規参入者や個人事業者には、より丁寧な審査が行われる傾向があります。その結果、地域によっては「実質的なハードルが高くなっている」と感じられることもあるでしょう。
5.複数の都道府県で許可を取得する場合の注意点
産業廃棄物収集運搬業は、都道府県単位での許可が原則です。したがって、2つ以上の県をまたぐ事業展開をする場合、それぞれで申請手続きを行う必要があります。
このとき、前述のとおり運用が異なるため、「他県で通った内容がここでは通用しない」という場面も少なくありません。複数県で申請を進める場合は、それぞれの自治体の指導要領や申請マニュアルをよく確認することが重要です。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業の許可は、法律上は全国共通の基準に基づいていますが、実務では都道府県によって運用や審査内容に違いがあります。その理由は、地域ごとの事情、過去の不正事例、申請者の対応など、さまざまです。
これから申請を考えている方は、「この県ではこうだったから…」と決めつけず、各自治体の最新情報をよく調べたうえで、丁寧に準備を進めることが大切です。
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