産業廃棄物の処理を外部に委託する際、通常は「排出事業者・運搬業者・処分業者」の間で契約が結ばれます。一般的には、運搬契約と処分契約を別々に締結する「二者契約方式」が用いられますが、これらを一つの契約書にまとめた「三者契約方式」も一部で行われています。

一見、効率的に見えるこの「三者契約方式」ですが、運用上いくつかの重大な問題点があるため注意が必要です。


1. 契約責任の所在が不明確になるリスク

三者契約方式では、1枚の契約書で排出事業者・運搬業者・処分業者が関係を取り結ぶため、責任の分担や義務の所在が曖昧になる可能性があります。

たとえば、産業廃棄物が処理途中で漏れた、または誤処分された場合に、どの事業者が責任を負うのかが不明確になるケースがあり、排出事業者が不利益を被るリスクもあります。


2. 契約書の不備による法令違反の懸念

廃棄物処理法では、運搬と処分それぞれの契約内容に必要な記載事項が細かく定められています。

三者契約でこれらの内容を1つの契約書に集約する場合、どちらか一方の記載が不足したり、記載内容が重複・矛盾したりする可能性があり、結果として不適切な契約書とみなされるリスクがあります。


3. 行政によるチェックが複雑になる

行政による立入検査や許可更新時の確認作業では、契約書の内容確認が重要視されます。

三者契約方式を採用していると、内容が複雑化しやすく、行政側から「運搬契約と処分契約を分けて明示するように」と是正指導を受ける事例もあります。特に都道府県によっては明確な指導基準を持っており、形式の統一を求められることもあります。


4. マニフェスト管理上の問題

三者契約方式では、マニフェストの管理や記載内容の整合性を確保することが困難になることがあります。

運搬業者と処分業者がそれぞれの役割に基づいて正しくマニフェストを記載する必要がありますが、契約書の形式が一つだと役割区分が不明確になり、記載ミスや管理上のトラブルが発生しやすくなります。


5. 信頼性や監査対応の観点からも不利

環境ISO(ISO14001)を取得している企業などでは、契約書類の形式や管理が厳格に求められます。

三者契約書では責任分界が不透明になることから、内部監査や第三者監査の場で指摘を受けるリスクが高まります。また、取引先からも契約形式について確認を求められることがあり、説明責任を果たせないと信頼を損なう要因にもなります。


結論:二者契約方式の方が実務的に安全

産業廃棄物処理においては、排出事業者が「運搬業者」と「処分業者」それぞれと別個に契約する「二者契約方式」が基本とされており、最もリスクの少ない形です。

三者契約方式を用いる場合は、法的要件をすべて満たした契約書を作成することはもちろん、行政への事前相談や専門家のチェックを受けることが望ましいといえます。

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