食品廃棄物の現状と課題

日本では年間およそ2,500万トン前後の食品廃棄物が発生し、そのうち可食部分の食品ロスが数百万トン規模とされています。発生源は製造・流通・小売・外食・家庭まで多岐にわたり、コスト負担や環境負荷(温室効果ガスの発生、焼却・埋立の増加)を引き起こします。対策の柱は、①発生抑制、②適切な分別、③再生利用の拡大です。

食品リサイクル法の位置づけ

「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」は、食品関連事業者(製造・卸・小売・外食)発生抑制と再生利用の取り組みを求める枠組みです。一定規模以上の事業者には毎年度の実績把握・報告再生利用等の目標達成が求められ、計画的な取り組みが前提となります。
再生利用の主な方法は次のとおりです。

  • 飼料化:パン耳・野菜くず等を家畜用に再資源化
  • 肥料化:堆肥に加工し、農地へ還元
  • メタン発酵:バイオガス化して発電・熱利用
  • 炭化・燃料化:固形燃料や土壌改良材として活用
    いずれも異物混入の少ない分別水分・塩分等の性状管理が成否を左右します。

現場で押さえる実務ポイント

食品リサイクルは、排出時点の工夫が鍵です。

  • 計測と見える化:日・週・月単位で発生量と内訳(生ごみ/売れ残り/返品等)を把握し、ロス要因(過剰仕入れ、製造歩留まり、陳列・提供量)を特定。
  • 分別設計:回収容器の色・表示・配置を統一し、異物混入(プラ包装、割り箸、フィルム等)を抑制。水切りや粉砕の前処理基準を明文化。
  • 委託・処理フロー再生利用事業者の許認可・受入条件・トレース体制を事前確認。マニフェスト(電子含む)運用、計量伝票の保管、実績の記録を徹底。
  • 衛生・臭気対策:密閉容器、温度管理・保管時間の短縮、定期洗浄で害虫・臭気を抑える。
  • BCP連携:停電・災害時に備え、一時保管ルール代替回収を手順化。

コスト最適化の考え方

食品リサイクルは「コスト増」と見られがちですが、混入率低下=処理単価低下につながることが多く、加えて一般廃棄量の削減可食ロスの縮減で仕入・廃棄の両面を圧縮できます。KPI例として、

  • 混入率(%):非食品物の混入比率
  • 単位当たり処理費(円/kg):処理・回収・容器費の合計
  • 発生原単位(g/客・kg/売上):業態標準との比較
  • 再生利用率(%):発生量に占める再資源化量
    を継続モニタリングし、週次改善会議→月次見直しの運用に落とし込むと効果が出やすくなります。

事業モデルと地域循環

地域では、製造・流通→回収→飼肥料化→農業→店頭販売のローカル・リサイクルループが広がっています。店舗は生ごみを資源として渡し、農家は堆肥で栽培、生産物は店舗に並ぶ——という循環の可視化はブランド価値にも寄与します。さらにメタン発酵電力の店内利用CO₂削減の見える化は、ESGやGXの観点からも評価されます。

消費者・従業員の巻き込み

現場改善は人の行動設計で決まります。

  • 従業員教育:分別の“やってほしいこと”を3点までに絞り、バックヤードの動線上に掲示。新人OJTで実地訓練を必ず実施。
  • 消費者との対話食べきり・持ち帰り容器の活用・期限表示の正しい理解を促す広報を行い、再生由来農産物のPOPで循環参加を後押し。
  • 可視化ツール:店頭やSNSで削減量・再生量・CO₂削減を発信し、社内表彰やインセンティブで行動の継続を支援。

今後の展望

需要予測や価格最適化にAI/IoTを用いることで、**“廃棄を出さない設計”が進みます。加えて、真空調理・小分け規格の見直し・製造副産物のアップサイクルなど、前段での発生抑制が主戦場になりつつあります。食品リサイクルは処理コストの話から価値創造(循環型の売り方・伝え方)**へ——環境と収益を両立する経営テーマです。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲郎(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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