1、処理業者への処理委託手順

①事前準備

排出業者の特定、廃棄物の種類、排出の荷姿、排出量などの情報を整理して事前準備を整えます

②処理業者の許可内容の確認

都道府県が許可をもつ廃棄物の種類、処理区分、有効期間など、その許可内容を確認します。

③事前協議・産廃税などの確認

都道府県をまたいで廃棄物を処理委託する場合など、処理業者がある地域の自治体に事前協議制度、産業廃棄物税などがあるか確認します。

④実地確認(監査)

法律では努力義務ですが、リスクを最小化するため実地確認を行い、その結果を記録することがいいと思います。

条例等で実地確認を義務付けている自治体も少なくはありません。

⑤委託契約の締結

委託契約は処理以前に締結します。また、この委託契約書のひな形は社内で作成するといいでしょう。

⑥廃棄物の搬出、マニフェストの交付

マニフェストA票に記入し、搬出の現場に立ち会ってマニフェストを交付します。

2、実務に関する5つのポイント

①許可内容の確認

処理業者へ処理委託するにあたっては、その処理業者の許可内容を確認します。

②委託契約の締結

委託契約は、排出業者と、収集運搬業者と中間処理業者とそれぞれ2者間で締結し、その委託契約書には、それぞれの業者の許可証のコピーを添付することが必要になります。

③マニフェストの交付、照合確認

廃棄物を収集運搬業者に引き渡す際、もしくは、自社運搬して処理業者に持ち込みを行う際には、排出事業者は必ずマニフェストを交付しなければなりません。

また、マニフェストのB2票、D票、E票などが収集運搬業者、処分業者から返金されてきたかを確認し、その内容の照合確認を行います。

④廃棄物の保管

廃棄物の保管方法も廃棄物処理法で規定されています。主には、保管場所を示す看板を掲示すること、高さ制限、廃棄物の飛散防止措置の3点です。

⑤処理業者への実地確認

処理業者への実地確認は、条例で規定されている場合を除き、法的には努力義務なので必須ではないですが、リスクを最小限にするための良い手段となります。

3、許可証

①許可内容の確認

委託する産業廃棄物の内容を明確にする事前準備が整ったら、委託する処理業者の許可証から許可内容を確認します。

②許可の種類

一般廃棄物と産業廃棄物、収集運搬業と処分業、さらに特別管理廃棄物かどうかで許可証がそれぞれ異なり、許可権者もそれぞれ異なります。

③適切な処理ができる処理業者かどうかを判断

取り扱うことができる廃棄物の種類やどのような処理ができるのかをチェックします。

④収集運搬業許可、処分業許可と設置許可

これまで説明してきた許可内容の確認は、収集運搬業許可、処分業許可のことで、これは「業の許可」もしくは「14条許可」とも呼ばれています。また、廃棄物処理法で定められた一定規模の処理設備及び最終処分場については、この業の許可とは別に「施設設置許可」が必要であり、「15条許可」とも呼ばれています。

⑤処分業の許可権者

許可証の許可権者が誰か確認します。

⑥収集運搬業の許可権者

処分業と異なり、原則的に都道府県が許可権者となります。ただし、積替保管を有する場合や、その一つの市のみでの収集運搬が行われる場合は、処分業者と同じく政令市も許可権者となります。

⑦通過する都道府県の許可は不要

許可は積込地、荷降ろし地の都道府県となります。

⑧廃棄物の種類と確認

ある収集運搬業者がもつすべての許可証に記されている廃棄物の種類が同一であるとは限らないということがあります。理由として、自治体が許可する許可内容は、収集運搬業者の申請どおりに認められるわけではないからです。

排出を予定している排出事業者もしくは処分業者が申請時に示されていないと、自治体は許可を出してくれません。

つまり、申請時に予定されていた廃棄物の種類が許可証に記されますので、自治体ごとに廃棄物の種類が異なることもあります。

よって、すべての許可証の廃棄物の種類は同一とは限りませんので、委託する廃棄物の種類が許可内容に含まれているかを必ず確認します。

⑨有効期限の確認

基本的には許可の有効期限は5年間です。

4、委託契約書

①書面での契約締結

電子契約でも可能です。

②1対1の契約

排出事業者と収集運搬業と処分業者との3者契約は禁止されています。

③委託契約書の記載事項

記載すべき事項が明記されていないと契約書の不備となり、罰則の適用を受ける可能性があります。

④委託契約書には許可証を添付

委託契約書には収集運搬、処分の許可証を添付することが法律で定められていますので、許可証の添付は必須となります。

⑤許可の有効期限の管理

許可証の有効期限は5年間(優良認定事業者は7年間)ですので、処理事業者が許可の更新をしないと許可が失効してしまいます。失効したままで処理委託を続ければ、無許可業者への処理委託となってしまいます。

⑥委託契約書の保存

委託契約書は、法理で契約終了後から5年間保存することが義務付けらています。

⑦収入印紙の貼り付け

委託契約書には、印紙税法で収入印紙を貼り付けることが定められています。

5、マニフェスト

①マニフェストとは

マニフェストとは、「廃棄物の処理が適正に実施されたかどうかを確認するために作成する書類(伝票)」をいいます。

②紙マニフェストと電子マニフェスト

マニフェストには、複写式の紙伝票のような紙マニフェストと、パソコン等を使用して情報登録する電子マニフェストがあり、そのどちらかで交付します。

③マニフェストの区分

排出事業者、収集運搬業者、中間処理業者間でやりとりするマニフェストを「一次マニフェスト」と呼びます。

中間処理後の残さなどは中間処理業者によって最終処分業者に処理委託されますが、その間でやりとりするマニフェストを「二次マニフェスト」と呼びます。

④マニフェストには、排出事業場から処分業者に直接運搬される「直行用」のマニフェストと、積替保管を経由して処分業者に引き渡される場合の「積替用」のマニフェストの2種類があります。

⑤マニフェストの流れ(直行用)

・廃棄物引き渡し時に交付

・運搬終了後に回付・送付

・中間処理終了後に送付

・最終処分終了後に送付

⑥交付の単位

マニフェストは、基本的には次の単位で交付します。

1、廃棄物の種類ごと

2、排出事業場ごと

3、運搬車ごと

4、運搬先ごと

⑦交付時の立会い義務について

紙マニフェストの場合は、廃棄物の引き渡し時に立ち会うことが求められています。一方、電子マニフェストの場合は立ち会い不要とされます。

⑧マニフェストA票の記入

マニフェストA票は排出事業者の控えとなる伝票です。

⑨マニフェストA票の保管

排出事業者は、マニフェストA票に必要事項を記入し、収集運搬業者に廃棄物を引き渡す際に収集運搬業者ににサインをもらい、A票のみを切り離して保管します。

⑩マニフェストの返送の確認

B2票、D票、E票が収集運搬業者や処分業者から返送されてきますので、その返送があった日を記録しておきます。

⑪マニフェストB2票、D票、E票

マニフェストの照合確認をします。

B2票:収集運搬終了報告

D票:中間処理終了報告

E票:最終処分終了報告

⑫マニフェストの照合確認

マニフェストの照合確認にあたって、

1、記入すべき事項の記入漏れはないか

2、虚偽の記入はないか

3、マニフェストの返礼期日を過ぎていないか

⑬処理業者に回付にかかる返送期日

収集運搬終了日、もしくは処分終了日から起算して10日以内の返送期日となります。

⑭マニフェストB2票の確認

収集運搬終了日でだけでなく、A票の内容が書きかえられたときの理由を確認する。

⑮マニフェストD票の確認

処分終了日でだけでなく、A票の内容が書きかえられたときの理由を確認する。

⑯マニフェストE票の確認

最終処分終了日でだけでなく、A票の内容が書きかえられたときの理由を確認する。

⑰事実確認

マニフェストB2票、D票、E票が期日以内に返送されてこなかったり、返送されたものが虚偽の記載の可能性がある場合はどう対処すべきか問題になります。

処理業者に問い合わせすることが必要とともに、生活環境上の支障が生じるような場合には、それを除去することや発生防止策を講じなければなりません。

⑱措置・報告

前述のような問題が発生した場合、排出事業者はその状況を把握し、必要な対策をとらなければなりません。その対策内容等をまとめた「措置内容等報告書」を所管の自治体へ提出する必要があります。

⑲マニフェストの保存

排出事業者は、マニフェストA票、B2票、D票、E票を5年間保存しなければなりません。

⑳産業廃棄物管理票交付等状況報告書

排出事業者は、産業廃棄物を排出する事業場ごとに前年度1年間(前年の4月1日~3月31日)のマニフェストの交付状況を「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」に記入し、各自治体へ6月末までに提出しなければなりません。

㉑電子マニフェスト

電子マニフェスト制度とは、(公財)日本産業廃棄物処理振興センターが運営する情報処理センターにパソコンや携帯電話などから電子化したマニフェスト情報を登録し、情報をやり取りするものです。この電子マニフェストシステムはJWNETと呼ばれています。

6、廃棄物の保管

①保管場所を示す掲示板の設置

廃棄物の保管場所に、縦60㎝以上、横60㎝以上の大きさの掲示板に必要事項を記入して設置します。

②廃棄物の飛散防止措置

具体的には、廃プラスチックのようなものは屋内の保管場所で保管するか、屋外であればブルーシートなどを被って飛散しないような措置をとります。

また、感染性のような特別管理産業廃棄物については、密閉された容器に保管するなどして飛散しなようにします。

③廃棄物保管場所の高さ制限

保管場所の壁の高さよりも50㎝低くすることや、壁のない側面からの勾配などについて制限が設けられています。

また、特別管理産業廃棄物のように容器が密閉されていれば高さ制限はないものと解釈されていますが、許容範囲はあると思われますので、安全面を考慮してある程度の高さにとどめておくのがよいでしょう。

投稿者プロフィール

吉田哲朗
吉田哲朗