①産業廃棄物の処理を委託する

産業廃棄物の処理責任は排出業者にあります。

排出事業者自らの力で産業廃棄物を処理できない場合は、産業廃棄物処理業者などに産業廃棄物の処理を委託します。

産業廃棄物の処理を委託する場合には、処理業者へ産業廃棄物の名称、運搬業者名、取り扱い上の注意事項などを記載したマニフェスト(産業廃棄物管理票)を渡します。

②産業廃棄物の処理をする委託するときのルール(委託基準)

産業廃棄物を自分で処理できない場合は、産業廃棄物処理業の許可をもった専門の処理業者に依頼して産業廃棄物を処理してもらいます。

そのときに排出事業者が守るべき産業廃棄物の処理方法(委託基準)が廃棄物処理法によって定められています。

具体的には、

①委託先

②委託契約書の作成

③マニフェストの交付

④委託契約書とマニフェストの保存

などに関する基準が定められています。

③処理業者と委託契約書を結ぶ

(1)委託契約書とは、排出事業者が産業廃棄物の処理を産業廃棄物処理業者に委託する際に締結する契約書です。

産業廃棄物の処理委託契約書は、排出事業者と産業廃棄物処理業者で、委託契約書を作成し、書面による契約を結ぶ必要があります。

(2)委託契約の当事者

排出事業者が、産業廃棄物の「収集運搬」と「中間処理」のそれぞれを処理業者に委託する場合、

①収集運搬については、排出事業者と収集運搬業者

②中間処理については、排出事業者と中間処理業者

と2者間で直接契約しなければなりません。

(3)委託契約書を作成する理由

産業廃棄物処理委託契約書は、排出事業者と産業廃棄物処理業者の合意に基づき、産業廃棄物の処理方法などを書面の形で明確にしておくため作成します。

④委託契約書に記入するもの

かならず記載するものとして

(1)「誰と誰の契約なのか」を明らかにするため、排出事業者と、産業廃棄物処理業者の名称などを記載します。

また、委託する産業廃棄物を処理するのに必要な、その処理業者がもっている許可の内容を契約書に記載します。

そして、契約書の末尾に産業廃棄物処理業の許可証のコピーを添付し、適切な処理業者への委託であることを明確にしておきます。

(2)「何を」委託するのかを契約書上で明らかにするため、木くずや廃油などの具体的な産業廃棄物の種類とその数量を記載します。

また、産業廃棄物を処理してもらう料金も、必ず委託契約書に記載します。

(3)「どのように」委託するのかという点に関して、産業廃棄物の発生工程や、性状・荷姿など、産業廃棄物を安全に処理するのに必要な情報提供の方法を、契約書に明記します。

また、産業廃棄物の処理後に、処理業者から排出事業者にその報告を行う方法を、契約書で定めておきます。

通常、マニフェストを返送することで報告を行うこととしています。

(4)そのほか、契約の期間や、万が一契約解除になった場合に、残された産業廃棄物をどうやって処理するかなども、必ず契約書に記載します。

⑤排出事業者が行うべき情報提供

(1)産業廃棄物は、さまざまな排出事業者の下から、多種多様に発生するため、廃棄物を安全に処理するためには、廃棄物処理業者がそれぞれの廃棄物に関する注意点を知っておくことが不可欠です。そのため、排出事業者から廃棄物処理業者に対し、廃棄物に関する情報提供を適切に行う必要があります。

排出事業者は、委託契約書の中で、「産業廃棄物の性状や荷姿」のほか、具体的な産業廃棄物の取扱注意点を記載する必要があります。

委託契約書には、排出事業者の責任において、廃棄物に関する情報提供を適切に行う必要があります。

その情報を記載していない委託契約書は、法定記載事項を満たしていにことになり、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という刑罰に科されます。

(2)特別管理産業廃棄物の処理を委託さる際は、委託するたびに、委託契約書に記載した情報提供内容と「特別管理産業廃棄物の種類と数量」を記載した内容を、あらかじめ処理業者に文書で通知することが必要です。この義務を怠ると、委託基準違反として、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という刑罰に科されます。

⑥委託契約書の未記載

委託契約書には書かなければならない事項がたくさんあります。

その中でも記載を怠ると大きな危機に直結してしまいます。

「産業廃棄物の種類」や「産業廃棄物の委託数量」、「産業廃棄物の処理料金」の3つは絶対記載事項です。

⑦毎月処理費が変動する場合の委託契約書

委託料金が毎月変動する場合には、毎月委託契約書を作成し直さなければなりませんから、大変な手間になります。

毎月の料金変動にも対応しながら、年度当初に交わす委託契約書の作成だけにする方法があります。それは、毎月変動する委託料金を、「覚書」によって確定させ、委託契約書と覚書を一緒に保存するという方法です。

⑧再委託は禁止されている

再委託とは、排出事業者と当初に委託契約を結んだ処理業者が、受託した廃棄物の処理を他の処理業者に委託することです。

廃棄物処理法は、再委託を原則として禁止しています。再委託することで産業廃棄物処理の責任の所在が不明確になり、不法投棄や無許可営業などの不適切処理を引き起こすおそれがあるからです。

例外的に、「あらかじめ、文書で、排出事業者の承諾を受けた場合」には再委託が認められています。ただし、再委託後に、さらに別の業者に再委託(再再委託)することは認められていません。再委託とは、一度限りしか行えない緊急避難的な措置です。

⑨委託契約の締結後に注意すること

(1)産業廃棄物処理委託契約書の内容

委託契約を結んだ後も、産業廃棄物の処理委託契約で決めた処理料金が、一般的な料金と比較して、著しく高くない(または安くない)か、委託先は許可の取消しなどを受けていないかなど常にチェックします。

(2)産業廃棄物を引き渡すとき

産業廃棄物を処理業者に引き渡す際には、

①引き渡す産業廃棄物は、契約書に記載したとおりか

②産業廃棄物に危険な物質を混入させいないか

③契約の相手方の収集運搬業者が引き取りに来たか

④契約書に記載した数量を大幅に超える量の産業廃棄物を処理させていないか

などを確認し、産業廃棄物をマニフェストとともに、処理業者に引き渡します。また、そのときは、マニフェストの控え(A票)を忘れずに受け取ります。

(3)マニフェストの返送があったとき

マニフェストの返送を受けたときは、

①期限内に運搬終了の報告(B2票)が返ってきたか

②指定した処分先に持ち込まれたか

③期限内に処分終了の報告(D票)が返ってきたか

④期限内に最終処分終了の報告(E票)が返ってきたか

⑤マニフェストの記載もれはないか

⑥マニフェストの記載は、委託契約書のとおりか

などを必ず確認するようにします。

(4)委託契約書とマニフェストの保存

委託契約書とマニフェストは5年間保存します。

しかし、不法投棄などが発生した場合には、6年以上前から委託状況を質問してくる行政庁が増えていますので、5年間といわず、可能なかぎり保存しておくのが安全です。

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吉田哲朗
吉田哲朗