
⑲産業廃棄物処理業者がつける帳簿
産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物処理委託契約書とマニフェストのほかに産業廃棄物の処理状況を正確に記載した帳簿を作成・保存します。帳簿は、事業場ごとに作成・保存します。
帳簿は1年ごとに閉鎖し、次の年度の始まりとともに、新しい帳簿を作成します。また、帳簿は、閉鎖後5年間、事業場ごとに保存します。
帳簿の必要性として、委託契約書とマニフェストだけでは、産業廃棄物の実際の流れを正確に把握することが困難だからです。
⑳産業廃棄物処理業者の帳簿の記載事項
(1)収集運搬を受託した場合
収集運搬業務を委託した場合、マニフェストを交付された日から10日以内に、マニフェストの交付者、交付年月日、交付番号(マニフェストの固有番号のこと)の3点を帳簿に記載します。
そのほか、毎月末までに、収集運搬をした年月日、排出事業者から受託した産業廃棄物の量、具体的な運搬の方法、運搬先ごとに集計した運搬量などを、帳簿に記載します。
積替え保管を行う場合は、積替え保管場所から排出した産業廃棄物の量を、毎月末までに、帳簿に記載します。
(2)中間処理業者が収集運搬業者に運搬を委託した場合
中間処理業者が、収集運搬業者に最終処分場までの産業廃棄物の運搬を委託した場合は、産業廃棄物を収集運搬業者に引き渡す前までに、マニフェストを交付した年月日と交付番号の2点を、帳簿に記載します。
そのほか、毎月末までに、運搬を委託した年月日、運搬業者の名称や許可番号、運搬先とそこへの運搬量(委託量)などを帳簿に記載します。
(3)処分を委託した場合
処分業務を受託した場合、一次マニフェストを交付された日から10日以内に、一次マニフェスト交付者、交付年月日、交付番号の3点を、帳簿に記載します。
そのほか、毎月末までに、受け入れや処分した年月日、産業廃棄物の受け入れ量、破砕や償却などの具体的な処分方法別の処分量、処分後の残さの運搬先とそこへの運搬量(持出量)などを帳簿に記載します。
(4)中間処理業者が残さの処分を最終処理業者に委託した場合
中間処理業者が、中間処理後の廃棄物の処分を最終処分業者に委託した場合、産業廃棄物を最終処分業者に引き渡す前に、一次と二次のマニフェストごとに、所定の事項を帳簿に記載します。
一次マニフェストに関する記載事項は、一次マニフェストの交付者、交付年月日、交付番号の3点です。
二次マニフェストに関する記載事項は、二次マニフェストの交付年月日、交付番号の2点です。そのほか、毎月末までに、処分を委託した年月日、最終処分業者の名称や許可番号、最終処分業者に委託した内容および委託量などを帳簿に記載します。
㉑排出業者に帳簿が必要な場合
(1)排出事業者にも帳簿が必要なケース
特別管理産業廃棄物を発生させている事業者と、産業廃棄物処理施設を設置している事業者の場合は、排出事業者であっても、発生させた産業廃棄物の処理に関して、帳簿を作成します。
帳簿の閉鎖は1年ごと、閉鎖後5年間、事業場ごとに帳簿を保存します。また、帳簿への記載は、前月中に扱った事項を、今月末までに記載します。
(2)排出事業者が自ら産業廃棄物を運搬した場合
特別管理産業廃棄物または産業廃棄物処理施設で処理した産業廃棄物の残さを排出事業者自らが運搬した場合は、運搬した年月日、運搬方法、運搬先ごとに運搬した量の3点を帳簿に記載します。
また、積替え保管を行う場合は、帳簿に積替え保管場所から搬出した産業廃棄物の量も記載します。
(3)特別管理産業廃棄物の運搬を収集運搬業者に委託した場合
排出事業者が、特別管理産業廃棄物または産業廃棄物処理施設で処理した産業廃棄物の残さの運搬を収集運搬業者に委託した場合は、運搬を委託した年月日、委託先の収集運搬業者の名称や許可番号、それぞれの運搬先ごとに運搬を委託した産業廃棄物の量の3点を帳簿に記載します。
(4)排出事業者が自ら産業廃棄物を処分した場合
排出事業者が発生させた(特別管理)産業廃棄物を、排出事業者自身が設置した産業廃棄物処理施設で処分した場合は、処分した年月日、処分した量、処分後の廃棄物を他所に運びだしたときはその量3点を帳簿に記載します。
(5)特別管理産業廃棄物の処分を委託した場合
特別管理産業廃棄物または産業廃棄物処理施設で処理した産業廃棄物の残さの処分を産業廃棄物処理事業者に委託した場合は、処分を委託した年月日、委託先の業者の名称や許可番号、焼却や埋め立てなどのそれぞれの処理業者ごとに委託した処理の内容、処理業者に実際に委託した量4点を帳簿に記載します。
㉒2010年度廃棄物処理法改正の概要
(1)排出事業者への責任追求の強化
排出事業者の責任の面で、従来から不法投棄の元凶といわれていた建設廃棄物の問題解決のため、元請業者を建設廃棄物の排出事業者に定めるなど、建設廃棄物に関する法律整備が厳重に行われました。
また、排出事業者自身による不適切な廃棄物処理を抑止するため、産業廃棄物の発生場所の外で、排出事業者が自社処理する場合には、排出事業者に帳簿の作成が義務付けられました。
そのほか、年間1,000トン以上の廃棄物を発生させている多量排出事業者が、「廃棄物処理計画」の提出などを怠った場合には、「20万円以下の過料」を課すなどの、規制強化が行われました。
(2)優良処理事業者の育成推進
一定の評価基準に適合した優良な処理業者に対いては、社会的インセンティブと実務的インセンティブの両方を与えることにし、廃棄物・リサイクルの健全な受け皿を増やす試みが諸につきました。
㉓建設廃棄物の取り扱い
2010年度廃棄物処理法改正で、建設工事で発生した廃棄物の排出事業者は、発注者から直接工事の発注を受けた
元請業者であると定められました。
また、工事現場内で廃棄物を保管する際には、元請業者と下請業者の双方に、保管基準の遵守義務が課されました。
保管基準に違反した場合は、元請業者と下請業者の双方が改善命令の対象になります。このように、建設工事の実態を踏まえ、下請業者にも廃棄物管理責任の一端を担わせることになりました。
今回の法律改正で、下記5つの条件すべてに当てはまる場合は、収集運搬業の許可なしに、下請が排出事業者として運搬することが可能になりました。
・建物の軽微な修繕維持工事で、請負代金が500万円以下の工事
・特別管理産業廃棄物ではないこと
・1回に運搬する廃棄物の容積が1立方メートル以下であること
・積替えための保管を行わないもの
・「請負契約」であらかじめ、下請が自ら運搬する廃棄物の種類その他を定め、さらに運搬の途上でその契約書の写しを携行すること
㉔廃棄物保管場所の事前届出
廃棄物処理法改正により、建設廃棄物(特別管理産業廃棄物を含む)を、それが発生した工事現場の外の「300平方メートル以上の」保管場所で保管をする場合、「あらかじめ」都道府県知事のその旨を届出なければならなくなりました。それに違反すると、「6月以下の懲役、または50万円以下の罰金」に科されます。
建設廃棄物保管場所の事前届出は、「保管場所の所在地・面積」のほか、廃プラスチック類やがれき類などの「保管する産業廃棄物の種類」、屋内で保管をするのか、それとも屋外で保管するのかという「保管方法」、「保管できる産業廃棄物の量の上限」「保管場所として使用を開始する年月日」、「保管を行う排出事業者の名称や連絡先」などを具体的に記載して、書類を提出する必要があります。
㉕マニフェストの交付後の注意点
今回廃棄物処理法改正で、「マニフェストA票の保存」が、排出事業者の新たな義務として追加されました。
そのほか、処理業者に対し、施設の故障や行政処分をうけたことにより、廃棄物の処理が困難になった場合には、委託者である排出事業者に、「委託された産業廃棄物を処理できなくなりました」という通知を書面で行う義務が追加されました。
産業廃棄物の処理ができなくなった通知を「処理困難通知」といいますが、処理困難通知を出さなければならないタイミングとして以下6の原因に限定されます。
①「施設の故障や事故」
②「事業の廃止」
③「施設の休廃止」
④「処理業者が欠格要件に該当」知
⑤「埋立終了(最終処分場の場合)」
⑥「行政処分を受ける」
そして、処理困難通知を受けた場合は、すぐに委託先業者を訪問し、事業地周辺の生活環境に悪影響が出ていないかを調査します。悪影響が発生している場合は、排出事業者自身の責任において、何らかの是正措置を迅速に行い、都道府県知事にも報告することになります。
排出事業者は、毎年6月30日までに、前年度分(前の年の4月1日からその年の3月31日まで)のマニフェスト交付実績報告を都道府県知事に行う必要があります。
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