1、2017年度法改正の内容

1.多量の産業廃棄物を発生させる事業所設置事業者への電子マニフェストの義務化

2.マニフェストの運用義務違反に対する罰則強化

3.グループ企業による廃棄物処理の特例

4.雑品スクラップの規制

5.処理業者による委託者への通知義務の拡大

6.産業廃棄物処理施設への命令規定の補足

7.保管基準違反への措置命令規定の補足

上記のうち、1.「多量の産業廃棄物を発生させる事業所設置事業者への電子マニフェストの義務化」のみ、施行は2020年4月1日からですが、他の部分は2018年4月1日から施行されています。

2、電子マニフェストに関する法律改正

2017年度の廃棄物処理法改正によって、前々年度に特別管理産業廃棄物を50トン以上発生させた事業場には、その2年後から特別管理産業廃棄物に関しては電子マニフェストを運用することが義務付けられました。

3、雑品スクラップの保管に関する規制

「雑品スクラップ」とは、「再生利用可能な金属」と「金属としては再生利用できない部品」が一体として発生した不用物を指すものです。

雑品スクラップには、「部品の大部分がリサイクル可能な物」がある一方、「リサイクルできる部品の量が非常に少なく、それ以外の大部分を廃棄物として処理せざるを得ないもの」が数多く存在します。そのため、雑品スクラップの買い取り業者の中には、雑品スクラップをぞんざいに扱い、管理の人でや労力をかけない者も多いため、野ざらしの状態で大量に放置された雑品スクラップから出火することが年々増えていました。

2017年度の廃棄物処理法改正によって、雑品スクラップの保管時から、規制していくことになりました。

4、同一グループの企業に認められた特例

2017年度の廃棄物処理法改正で、一定の要件を満たした企業群を一体の排出事業者とみなし、産業廃棄物処理業の許可を取得することなく、共同して産業廃棄物を処理することを認める認定制度が創設されました。

認定を受ける要件として

①当該二以上の事業者のうち他の事業者の発行済株式の総数、出資口数の総数又は出資価額の総数を保有

②下記の条件を満たしている

・当該二以上の事業者のうち他の事業者の発行済株式、出資口数又は出資価格の総額の3分の2以上に相当する数又は出資を保有。

・その役員又は職員を当該二以上の事業者のうち他の事業者のうち他の事業者の業務を執行する役員として派遣していること

・当該二以上の事業者のうち他のうち他の事業者は、かつて同一の事業者であって、一体的に廃棄物の適正な処理を行っていたこと。

5、水銀廃棄物に関する法令改正の概要

2013年の「水銀に関する水俣条約」が採択され、2015年に廃棄物処理法施行令の改正が行われ、廃棄物諸織法で規制される水銀廃棄物の種類が3つ追加されました。

2017年10月1日から水銀廃棄物の処理に関する規制強化の部分と合わせて、廃棄物処理法で規制される水銀関連の廃棄物は全部で4種類となりました。

6、水銀廃棄物管理の実務

①水銀使用製品産業廃棄物は一度に大量に発生するものではないため、産業廃棄物保管場所として定めた場所で保管せざるを得ません。

そのため、水銀使用製品産業廃棄物の保管時の注意点は以下の2点あります。

(1)水銀使用製品産業廃棄物が保管中に万が一破損した場合の備えとして、また水銀使用製品産業廃棄物以外の廃棄物と混同しないように、仕切りを設けた状態で保管する必要があります。

仕切りは、産業廃棄物保管場所に仕切り壁を増設する必要はなく、水銀使用製品産業廃棄物専用の保管容器を用意して、そこに蛍光管だけを入れるようにすれば、保管容器自体が仕切りになり、それほど大きなコストを掛けることなく保管基準を満たせるようになります。

(2)保管場所であることを示す掲示板に「保管する産業廃棄物の種類」として、「廃蛍光管」であれば「ガラスくず、金属くず(水銀使用製品産業廃棄物)」と、保管対象物が明確にわかるように記載することです。

②収集運搬や中間処理を委託する場合は、「水銀使用製品産業廃棄物」の取り扱い許可を持った産業廃棄物処理業者に委託しなければなりません。

③委託契約書の法定記載事項の一つである「委託する産業廃棄物の種類」に、「廃蛍光管」であれば「ガラスくず、金属くず(水銀使用製品産業廃棄物)」と、水銀使用製品産業廃棄物であることを明確に記載する必要があります。

④運搬の途中で水銀使用製品産業廃棄物が破損しないように、通常は専用の容器や梱包材にくるんだ状態で産業廃棄物処理業者に引き渡しをします。

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吉田哲朗
吉田哲朗